新刀

相州伊勢大掾綱広
Soushu Ise daijyo Tsunahiro

鑑定書内容:財)日本美術刀剣保存協会 特別保存刀剣[N.B.T.H.K]Tokubetsu Hozon Token

相州伊勢大掾綱広Soushu Ise daijyo Tsunahiro
  • NO.586
  • 銘文:相州伊勢大掾綱広
  • Sign:Soushu Ise daijyo Tsunahiro
  • 種別:白鞘脇差 Wakizashi and Shirasaya
  • 寸法:1尺3寸6分(41.2cm)反り0.6cm 元幅3.5cm 元重0.7cm
  • 時代:江戸時代中期ー相模国(神奈川県)
  • 価格:御売約 Sold Out
  • 伊勢虎彦氏、第46代横綱朝潮太郎関旧蔵品

江戸時代、相州綱広5代目、津軽打で有名な相州伊勢大掾綱広の脇差。
綱広は江戸時代の相模国を代表する刀工で、以下同銘にて大正に至るまで十六代続いている。特に三代綱広は慶長年間、津軽藩主為信の招きによって弘前に赴き、大小三百振りを鍛えて霊山神社と将軍家に納め、その報賞として大判五十枚をうけたという逸話が残っており、「徳川実記」によるとこの綱広を伊予大掾ともしるしている。
本作は身幅が広く、大きく寸の延びた大柄な平造りの脇差で、地鉄、小板目がよくつみ、地沸微塵についた鍛えに地景がよく入り、刃文、沸出来の互の目を焼き、金筋・砂流しよく入り飛び焼きを交えるなど同流派の特色をよく表している。腰元の不動明王の彫も轟々とし刀身と見事に調和されており、刃文、地鉄、彫、全てにおいてに整えられた同作中のまさに傑作である。
本作には堀川一門作品における日本最高峰のコレクターとして知られた伊勢寅彦氏と第46代横綱朝潮太郎関との逸話が残されており、伊勢氏発刊の「堀川国広とその弟子」において佐藤寒山氏が述べているとおり、二人は大の相撲好きで、どちらかといえば伊勢氏の方が先輩格であったようであるが、顔を合わせればお互いに日本刀と相撲について語り合う仲であった。
昭和33年、好成績で横綱昇進を果たした朝潮太郎は34年、35年と成績が振るわず、横綱昇進を決めたにも関わらず、なかなか優勝が出来ず困窮していた。大の愛刀家であると同時に大の相撲通として親交を深めていた両氏は、横綱に昇進を決めながらも結果の振るわない朝潮太郎関を見かね、激励を贈るべし!と意気投合し、激励文を鞘に施し、初場所初日に寒山氏が鞘書を加えて本作を贈ったとの事である。なお、本作の激励の賜物か、朝潮太郎関は同場所にて見事に優勝を決め引退、有終の美を飾っている。
伊勢寅彦氏直筆の鞘書に
「可以不動心振威徳誉 日下開山朝潮太郎関謹呈 伊勢寅彦」
佐藤寒山氏加えるに
「相州伊勢大掾 時代萬治〜 昭和三十六年辛丑歳 初場所初日」と残されているが、日下開山とは室町時代に禁令の出た「天下一」という呼称の代わりに武芸者に用いられ、江戸後期よりは横綱力士の別称として用いられた語であり、内容を読み下すと「不動心ノ威徳ヲ以テ振ワシム可シ」となり、本作の彫物、不動明王と、大威徳明王に、それぞれ不動の心、威徳を掛けて、強烈な激励の意を伝えている。日本刀文化と日本伝統武芸である相撲文化の交流を示すかつ縁起の良い好資料であり、これだけの名刀を激励に贈答するとは流石天下の愛刀家である。

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