刀剣界ニュース

風向計 其ノ三

業界の自転

 何業に限らず、その業界の好・不況の景気診断は、世界の経済や政治の状況と、それらに敏感に影響される日本経済の動向を見極めながらのものとなるが、それとは別に、各業界個々の事情も重要な診断材料となり得る。 

 世の中が好況に沸いているときに縮小を余儀なくされる企業もあれば、不況下にも業績を伸ばす会社もあるように、必ずしもすべてが世界や日本の経済の動きと比例しているとは言い得ないが、自身の力の及ばない絶対的な大きな力に左右されていることは否めない事実であろう。

 それは太陽の周りを回り、しかも自らも回転している地球にも例えられよう。日本を含む世界的規模の政治・経済の核となるところのものが太陽、各種業界が太陽系の一つである地球だとすれば、地球は太陽の影響をまともに受けながらも一方で自転も繰り返しているのである。

 この太陽を巡る公転の部分は日々の新聞やニュースに詳しく、日本中の誰もが現状を把握し得るのであるが、個々の特殊事情による業界の自転部分は報道されず、現況判断と先行きの見通しは各人によって異なり、また一致指数が表されていない業種も多く、全く先が読めないといったことも起こり得るであろう。

よりよい自転を

 さて、翻ってわが業界の公転と自転とを眺めてみると、業界自体にも二面性があり、しかも双方は関連し合って動いている。つまり、小売り主体の業態と交換市場などが中心の商いとである。愛好家・収集家を対象とする店頭などでの小売り活動の売れ行きや値動きは、世の中の景気・不景気が購入動機の有無に直結する公転の影響を強く受け、業界内で行われる交換会などの取引相場は自転のもたらすところが大きい。

 いずれも現在は最低ラインまで落ち込み、悲観的な見方が蔓延しているが、結論的に言ってそれほどの心配はなく、既に底は脱したとも言い得る。最近の報道によれば、外需がブレーキになり景気回復の足を引っ張っているようではあるが、わが国自体は大震災からの復興需要を背景に、緩やかではあるが回復しつつあり、依然として厳しい環境の中にありながら、内閣府などの発表による景気動向指数は強気に推移している。  

 一方、業界内における自転作用の影響は、五カ月前に起こった不払い事故により急速に市場が縮小し、出来高も相場も落ち込んだが、現在は実需に基づく健全相場が確立され、下落は底を打っている。業界内では実は公転による影響よりもこの自転による作用の方が数字にも表れて理解しやすく、また実感としても各人のマインドに深く刻まれるものである。

 しかし、個々の業者も、後ろを振り向いてばかりはいられないというのが共通認識で、これから秋、年末・年始にかけて新たな戦略を立てたいところでもあり、市場も次第に活況を呈してくるであろう。

 公転の影響は避けられなくても、自転こそは自らの努力で改善することが可能である。自転ならぬ自転車操業の売買で一時的に膨張した後に大きな被害を被るよりも、安全・確実な取引相場の方が永続性があり、また計算も立ちやすいものである。

 太陽の影響を受けながら四季を織り成しつつ、刀剣業界自身も昼夜を繰り返している。遅まきながらようやく業界は、不払い事故の勇気ある事前抑止が景気安定の要であることに気付いてきたところである。より良い自転のために、知恵を出し合う時が来ているのである。

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