刀剣界ニュース

「想い」を託される品格ある刀を

 平成二十四年の大刀剣市では、最終日に全日本刀匠会関東支部のブースで当番を務めました。
 今回、日本美術刀剣保存協会と日本刀文化振興協会の両協会が共同で新作刀の展示を行ったのは、非常に有意義でした。
 私は両協会が分かれてからはコンクールへの出品をしてこなかったのですが、全日本刀匠会の一会員としては、この厳しい時代、やはり刀剣界が一丸となって困難を乗り越えていってほしいとの想いがあります。
 美術力剣界の一大イベントである大刀剣市で、このような機会を設けていただけたことは大変にありがたい話です。狭い世界ですので、これからに向けて前向きに歩んでいければ良いと願っています。
 さて、私が刀鍛冶になった経緯ですが、高校在学時にふとしたきっかけで刀鍛冶になると決意し、卒業後に福島の藤安将平門に入りました。
 作風としては直刃から乱れ刃まで焼きますが、在学中から山城物などの名品に惹かれていて、それらを意識しているのは今でも変わりません。そのために、小手先で工夫して古作を追うのではなく、技術的本質に立ち返って本来の日本刀作りはどうであったのか、自問自答しながら、品格というものに重きを置いて先を目指しています。
 特に姿に関しては、切削・研磨機械が発達している現在はいかようにもなると考えられがちですが、実はどうにもならない難しさがあると思っています。なぜなら、自分が理解できている姿しか形に表せませんので、名品の中でも良い姿を手本に、より深く理解できるよう努力をしています。
 現代において、われわれ力鍛冶の役割として大事なのが、お守り刀ではないかと考えています。考え方はさまざまですが、やはり新作の力に「護り」の想いを託したいという方は多いと思いますので、その想いに応えるべく精いっぱい製作に当たっています。
 今後も願わくば、いつまでも大切にされるような、翻すと大切にしたいと思われるような、それこそ見識の高い人たちにも、日本刀を見慣れない人たちにも何か光るものを感じさせる刀を作っていきたいと思っています。

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