刀剣界ニュース

日本刀とデザイン

 YS-11という飛行機をご存じだろうか言わずと知れた戦後唯一の国産旅客機である。零戦の悪夢にうなされたGHQは、日本にあるすべての飛行機を破壊し、航空機メーカーを解体した。戦後、日本における飛行機の製造が許可されると、かつての零戦の設計者たちが国の威信を懸けて開発したのが、名機と呼ばれるYS-11である。
 それから半世紀がたち、今年新たに試験飛行を迎える国産ジェット旅客機がある。三菱重工のMRJである。この世界最高レベルの国産次世代ジェット旅客機、デザインモチーフが日本刀であることはあまり知られていない。零戦時代から現代まで、日本人の精神は確実に受け継がれ、日本刀を媒介として現代に日本の心と美を表現しているのである。
 国産の高級車ブランドのレクサス、ここにも日本刀のデザインイメージが採用されているらしい。研ぎ澄まされた緊張感と日本の美意識表現に、日本刀はきわめてイメージが良いのだろう。
 海外ブランドで言えば、アップル社のノートブック。アルミ削り出しのボディを奢る、他に類を見ない洗練されたノート型パーソナルコンピュータである。美しいエッジの効いたデザインは他の追随を許さない。
 そのデザイン担当で副社長であるジョナサンが、日本刀の鍛錬工程を見るだけのために日本を訪れ、刀匠が夜通し行う作業を懸命に見つめていたという。彼が日本刀からインスパイアーされてデザインの方向性を決めたことは、想像に難くない。
 この手のエピソードはいくらでもあるが、一貫して共通するのが、日本刀が世界で最先端のクリエーターたちによって、その芸術性が高く認められていることである。
 日本刀離れなどと言われているが、そんなことは今に始まったことではない。私たちの生活の中には、日本刀に影響されたものが驚くほど溢れている。確かに刀がポンポン売れる時代ではないが、一度フラットな視点に立ち、グローバル・マーチャンダイジングを展開することも一つの手ではないだろうか。

Return Top