刀剣界ニュース

「大刀剣市」と「明美ちゃん基金」

 全国刀剣商業協同組合は設立以来二十五年間、「大刀剣市」に際して募金を行うなど、「明美ちゃん基金」を応援してきました。しかしながら、「明美ちゃん基金」について、「何となく知っている」が、「詳しくはわからない」と言う方が少なくないので、あらためて「明美ちゃん基金」の成り立ちとその意義についてまとめてみました。
▽「明美ちゃん基金」とは
 「明美ちゃん基金」は、先天性心臓病などに苦しみながら、経済的事情で手術を受けることができない子供たちを救うため、産経新聞社が提唱してされた基金です。活動基金はすべて一般の人たちからの寄託金で賄われ、これまで四十年以上にわたり、百人を超える幼い命を救ってきました。
▽一通の投書から基金が誕生
 昭和四十一年六月七日、一通の投書がきっかけとなり、『サンケイ新聞』(現『産経新聞』)社会面に闘病生活を送る少女の記事が載りました。
 少女は鹿児島県に住む伊いせじ瀬知明美ちゃん(当時五歳)。生まれつき心臓の右心室と左心室の間に穴が開いている心室中隔欠損を患い、「手術をしなければ、あと二、三年の命」と宣告されていました。手術費は五十万円。現在の五百万円にも相当します。八人家族で農業を営む両親にとって、わずかな田んぼを売り払っても到底手の届かない大金でした。
「明美ちゃんを救おう」。記事は大きな反響を呼び、その日のうちから産経新聞社の社会部に電話や手紙が殺到し、一週間後には四百二十件・四百二十五万円余りが集まり、手術に必要な金額をはるかに上回りました。
 「まだ第二、第三の明美ちゃんがいることと思います。そのような人たちに一日も早く明るい日を与えてください」(神奈川県の中学三年生たち)。善意を寄せた人の中には、こんな意見も多くありました。同社は、明美ちゃんの両親や、手術を引き受けた東京女子医大付属心臓血圧研究所の所長・榊原仟
しげる教授らと協議しました。
 こうして、早くも同月の十五日、心臓病の子供を救う日本で初めての基金「明美ちゃん基金」が誕生しました。
▽広がる使命
 明美ちゃんは、直ちに心臓血圧研究所へ入院しました。当時、心臓病の世界的権威と言われた榊原教授の執刀で、手術は成功しました。
 その後、「第二、第三の明美ちゃん」たちが基金の適用を受け、元気を取り戻していきました。基金の活動をきっかけに、先天性心臓病の子供に対する国の対策も前進しました。それにつれて、基金には、発展途上国の子供たちを救うという新たな使命が加わっていきました。
 「明美ちゃん基金」は四十数年にわたり愛と命のバトンタッチという大きな善意の橋渡し役として成長してきました。この灯をみんなでいつまでもともし続けたいものです。
 大刀剣市には初回から、基金の運営に当たる産経新聞社とフジサンケイ
 ビジネスアイの絶大な後援をいただいてきました。おかげさまで、二十五回目の今回は昨年を上回る二千九百九十六人(チケット入場者数)が見えられました。お客さまや組合員から寄せられた明美ちゃん基金への善意は、合計十六万百四十八円でした。ありがとうございました。(持田具宏)

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