刀剣界ニュース

「登録証」の現状と課題

刀剣商の近ごろの悩みと言えば、景気の低迷や流通する商品の少なさなどいろいろあるが、「銃砲刀剣類登録証」も重大な問題の一つではなかろうか。
「登録証」の何が一番問題なのか―。それは所有者変更届にある。
 銃砲刀剣類所持等取締法第七条に「登録を受けた銃砲又は刀剣類を譲り受け、若しくは相続により取得し、……二十日以内にその旨を文化庁長官に届け
出なければならない。」とあり、銃砲刀剣類登録規則第九条には「法第十七条第一項の規定による届出は、譲受け又は相続による取得の場合にあつては第五号様式の所有者変更届出書により、……しなければならない。」とあって、届け出が義務づけられているのである。
 所有者変更届は、直接には都道府県教育委員会に提出する。刀剣の場合、規則に従い、登録番号、種別、長さ、譲り受け又は相続により取得した年月日、旧所有者の氏名などを所定の様式に記入して郵送すればいいではないかと思うだろうが、それだけでは済まない。都道府県ごとに届出書の様式が異なり、従って手続きも変わってくる。
 掲示した東京都の様式では規則第五号様式よりも詳細な情報が求められ、しかも銃砲刀剣類登録証のコピーを同封しなければならない。この手続きは、規則には見当たらない所有者の住所変更についても同様に適用される(東京都教育委員会銃砲刀剣類登録事務等処理要項に基づく)。
 一カ月ほど経過し連絡がなければ変更手続きは完了したものと理解していいが、万が一「届出内容が登録原票と一致しない」などと連絡があったら大変
である。現物確認審査を受け、それを基に登録証の訂正や再交付または新規登録をしなければならない。新規登録になると、場合によっては警察署に調査依
頼をしたり、発見届までしなければならないことになる。
 なぜこんなことが生じるかというと、登録証に間違いがあるからである。現物と長さが違っていたり、銘文の書き漏れや読み違いから単純な誤字・脱字まで、「何で」と思うくらい間違いが多い。偽造や改ざんもある。
 現物確認審査を実施するのは、①現物と登録証が一致しない、②登録証または登録原票に作成時の誤りが発見された、③登録証と登録原票との記載内容に相違があるときで、その場合は、鑑定申請書と現物確認審査申立書に記入し、登録証(写)と茎の押形または写真を添付して提出する。
 仮に他道府県で登録された刀剣だと、そこの教育委員会に所定の申請書を送り、道府県から申請者在住地の東京都に対し審査依頼がなされる仕組みになっ
ている。
 審査の結果、不一致のときは全国照会を行い、登録の該当があったものはその道府県から再交付が受けられ、該当がなかったときは東京都が新しい番号の登録証を発行するということである。ただし、不一致の原因が登録証の偽造や改ざんによると疑われた場合、所轄の警察署に調査を依頼することになる。
 刀剣登録制度は昭和二十五年の銃砲刀剣類等所持取締令(十一月十五日公布、十一月二十日施行)に始まる。それまでは、連合国最高司令官の民間武器回収命令を完全に履行するための銃砲等所持禁止令により、銃砲火薬類及び刀剣類の所持が禁止され、「刀剣類で美術品として価値のあるもの」などが所持禁止の除外となっていた。すなわち、当初は地方長官(東京都は警視総監)から刀剣類所持許可証が交付され、名義変更さえ許されなかった(従って売買も)。
 取締令では銃砲・刀剣類の所持を原則的に禁止するものの、「文化財保護委員会の登録を受けて所持するとき」などは除外され、「美術品または骨とう品として価値のある火なわ銃式火器」と「美術品として価値のある刀剣類」が登録の対象に明記されたのである。その後の銃砲刀剣類等所持取締法(三十三年)、銃砲刀剣類所持等取締法(四十年)でも原則は踏襲されてきた。
 所持の許可ではなく、ほとんどの刀剣を美術品と定義し、一振一振に登録証を発行し、国民の誰もが保有することのできるこの制度は当初、素晴らしいものだった。連合国側によって一律に武器とされ、戦利品として略奪され、あるいは無差別に接収され、滅亡にさえ瀕しつつあった状況から救ったのだと聞かされ「なるほど、そうだったのか」と納得したものである。
 しかしながら、あれから六十年以上、登録制度の見直しはほとんど行われてこなかった。その結果、指摘したような運用上の不具合が多々生じている。
 これは昭和の期間、所有者変更届が現実に行われず、規定が有名無実化していたことに原因があると思うのだが、いかがであろう。平成に至って、全国刀
剣商業協同組合が主導して所有者変更届を出すようになり、登録証問題が一層如実になってきたのである。
 また新規登録に際し、教育委員会の銃砲刀剣類登録審査会以前の、警察署における発見届現場での厳しい対応を指摘する向きも全国に及ぶ。
 公益財団法人日本美術刀剣保存協会では、保存・特別保存刀剣などの審査において、登録証を重視するようになってきたという。
 これらの問題については、都道府県教育委員会、警察庁、日本美術刀剣保存協会、日本刀文化振興協会、全国刀剣商業協同組合などの関係機関が解決に向けて協力し、行動していく必要があろう。わが組合と組合員は、最もかかわりの深い当事者として、継続し取り組んでいきたいものである。(持田具宏)

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