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尾張徳川家の至宝 大大名の見識の深さに驚嘆する

正月九日、江戸東京博物館に行ってきた。今回の展示は、開館二十周年の記念特別展「尾張徳川家の至宝」である。
 会場に一歩足を踏み入れた途端に、いきなり銀溜白糸威具足(徳川義直所用)が迎えてくれた。この展覧会は、一尚武、二晴雅、別格とした至宝「源氏物語絵巻」「初音の調度」、三教養の構成になっており、いきなり尚武であるから、すぐに目的にたどり着く。  まずは国宝「来孫太郎作(花押)正応五年壬辰八月十三日」である。来孫太郎を来国俊として伝来している太刀だ。
 続いて、次も国宝。金象嵌銘「正宗磨上本阿彌(花押)」(名物池田正宗)。次に村正、朱銘「兼氏(花押)」と来て、今回唯一の脇指「虎徹興里作寛文五年三月吉日」。
 これは今回初めて拝見するが、大切先の長脇指で、いかにも刃味の良さそうな作品である。虎徹が乕徹になるのは寛文四年秋ごろからと言われているが、これは寛文五年と年紀を切っており、虎徹の初期作風と銘字の移り変わりを示す貴重な作品であろう。尾張家三代綱誠が注文し、寛文七年に買い上げたことが、尾張家の記録からわかるそうだ。
 それから、無銘保昌短刀(徳川家康所持)。最後に国宝「国宗」である。この国宗も素晴らしい。物打下の刃文なんぞ、二重刃風で何とも言えない風情である。
 刀はこれだけだが、この後に尾張家十四代帯用の大小拵。刀装具は、これも祐乗の丸木橋三所物を筆頭に、宗乗、乗真、光乗、徳乗の作品が展示されている。さらに火縄銃も、宍粟鋳鉄三重張「慶長拾六年十月吉日日本清堯(花押)」と銘する繁慶の作がある。このほかにも、弓馬具、陣中道具、火事装束と展示が続く。
 それから、晴雅、至宝、教養と続くが、茶道、能、香道、琴、琵琶、三味線、囲碁、将棋、書画、古筆、それに源氏物語絵巻、初音の調度と拝見し、徳川時代
の大大名の見識の深さをつくづくと感じさせられた。
 最後に、教養のコーナーにあった、われわれにもわかるものを一点挙げておこう。
 新古今和歌集抜書、本阿彌光悦筆。
 光悦は、徳川・前田をはじめとする武家、近衛信尹・烏丸光広らの公家、茶屋四郎次郎・角倉素庵らの豪商などと交友を結び、刀剣の鑑定、書画は言うに及ばず、蒔絵や陶芸などにも秀で、芸術家・文化人として重きをなした。
 こんな巻物が何気なく置いてあるところがすごい。(持田具宏)

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