刀剣界ニュース

刀剣商リレー訪問12 三浦優子さん 女性の視点で「日本刀の勧め」

交換会会場でパンツスーツの似合う笑顔の素敵な女性刀剣商と言えば、誰も異口同音に三浦優子さんと語るに違いない(こりゃ大平岳子新理事が怒るな)。
 今回のリレー訪問、珍企画でサイクリストを自称する綱取譲一が、自転車に乗り東松山市高たか坂さかの三浦さんの職場を訪ねるロングライドとなった。
 日曜の朝八時三十分に世田谷の自宅を出発し、着いたのが十一時三十分、距離六十二キロ。目的地手前十キロ地点から道がわからなくなったが、地図を何度も見ながらたどり着いた。もはやGPS付き多機能携帯や自転車ナヴィの時代に、背
中に地図を背負っているのは俺ぐらいのものだな。自宅に戻ると百二十四キロか、軽い軽い。
 地元の美味しいサンドイッチと野菜ジュースをごちそうになりながら伺った話によると、二十年前に高坂の地に不動産業として開業。六年後に美術品・刀剣へスイッチしたそうで、現在に至る十四年間の実績を持つという。その間、埼玉県比企郡の、しのぎ美術刀剣美術館の大沢都志夫氏に営業のノウハウと鑑定の指導を受けた。
 彼女の現在の堅い仕事ぶりを見れば、納得がいく経緯だ。
 現在陳列中の商品を見れば、拵付きの刀剣、象嵌や高彫りの施された刀装具が目の付くところに置かれ、女性らしい気配りを見せている。
 いつも笑顔で陰りを見せたことのない三浦さんだが、高坂の地に来たばかりのころはよそ者扱いされた苦い経験を持つ。畑仕事を手伝い、道端に花を植え、地元の人々と触れ合うことを心掛けたというから驚かされる。確かに、客足が絶えることがない環境かと言うとそうではない。そう、すぐ外を見れば住宅と農地が混在し、さらに遠くに目をやれば秩父の山々まで見渡せる。秋が深くなると、農家の軒先に簾のように柿が吊るされる。そんな日本の原風景もすぐそこにあるような環境下で、三浦さんは頑張っている。
 同業者という立場の組合員の皆さんからも、彼女にエールを送ってほしい。この日も常連さんから「楽しんでるよ」という電話があり、弾んだ声で応対する姿に商売人の基本を見た気がした。
 かつて美術刀剣青年会に彼女が初めて来たときに、伊波賢一理事が言った「三浦さんって人懐っこくていいですね」という言葉も、彼女からにじみ出るこの基本の「朗らかさ」の部分を受け止めたから出たのだろう。
 帰路、全体の百三キロメートル地点、和光市から練馬区に入る笹目通りの上り坂、大した坂じゃないのに効くなー。さすがに五十四歳には強い日射しの下
百キロ以上のサイクリングはきついか。往路は、俺みたいな中年でも、アイドル刀剣商三浦さんに会うことを目標にペダルも軽かったが、帰りは重いな。
 昔、雄犬が雌犬に会いたくて川を泳いで渡るのが話題になり映画にもなっていたが、何だか俺ってあの犬に似ていないか?
 ここでビンディングを外し、足でも着いたら、体力とスタミナを計算できない犬より間抜けな奴になってしまう。何か帰路の励みを考えなきゃな。家に着いたら、近所のスーパーで売っているカツオの叩きで一杯やるか。何だ!
 やっぱり猫や犬と俺は同じだな。

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