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佐野美術館がリニューアルオープン

静岡県三島市の佐野美術館がリニューアルし、四月十八日、開館記念式典が執り行われた。
 当館は昭和四十一年に開館。四十七年の歴史の中で幾度かの改修工事を行ってきたが、本館二階にあった収蔵庫が手狭になってきたことから、美術館創立四十五周年を機に記念事業として収蔵庫棟を増設。それに合わせ、本館の内装および設備を更新する工事を昨年五月から始め、この度リニューアルの運びとなった。
 本館は外装・内装とも白色を基調としたデザインに変更。館内を明るく開放的な空間にするため、至る所に工夫が重ねられている。老朽化した設備面の更新、ミュージアムショップの改修、コミュニケーションスペースの設置、映像コーナーの新設、全館LED照明への変更、そして常設展示室の新設である。
 特にこのLED照明と常設展示室には、目を見張るものがる。
 LED照明は、パナソニック製の最新設備を導入した。特に調光と調色には気を使っていて、三〇〇〇K(ケルビン、色温度の単位)と四〇〇〇Kの二本のLED管を使い、展示作品に合わせてその色温度・照度を調整できる機能を持つ。
 常設展示室は元収蔵庫のスペースを利用して新設された。重要文化財の大日如来坐像や重要美術品の蔵王権現立像など木彫を展示するために、調湿機能のある漆喰、珪藻土の壁を利用。さらには来場者のかねてからの要望により、日本刀をはじめとする収蔵品の常設スペースを設けた。こちらには、エアータイトを利用した特殊な展示ケースを導入した。これは展示スペース内に外部の空気が一切入らないため、温湿度の調整が独立してできる構造で、全長約五メートルである。
 本年度は、ここに所蔵する日本刀のうち五点ずつが三カ月ごとに変更して展示される予定。七月六日から十月六日までは、平安時代から室町時代までの生ぶ茎の備前刀が展示される。
 記念式典は二部構成で、第一部は美術館のお披露目と、リニューアルオープン第一弾展覧会「画業六十五年記念赤堀尚―赤の軌跡」全八十点の内覧会。
 第二部は会場をみしまプラザホテルへ移し、祝賀会が行われた。官公庁関係者、工事関係者、美術館・博物館関係者、展覧会関係者、建設資金寄付者ら約百三十名が参列した。
 渡邉妙子館長にお話を伺った。
 ―今回の佐野美術館リニューアルに対する思いをお聞かせください。
 「建物を壊して建て直すことは簡単だが、創立者佐野隆一の思いのこもるこの建物を残しつつ、内装は現代のニーズに合わせたデザインに変え、新旧をうまくマッチさせる。建物は雨風を防ぐだけではなく、入った者の精神をすべて支配する。また来場者が抵抗なく入ることができ、そこで絵を見たり、話したり、物を書いたり、創作的な意欲が生まれるチャンスを作る。それが美術館の建物と言える」
 ―新設した常設展示室は絨毯張りでしたが、既存の企画展示室のフローリングを変更しなかったのはそのためですか。
 「あのフローリングは、当時最高のもの。汚れを取るために五ミリ削って綺麗な杢を出した。壁もただの白い壁ではなく、漆喰や珪藻土といった自然素材を一部取り入れている。これらは例えば室内空気環境への配慮とともに、人の気持ちをも和ませる効果も考えている。和めないと美術鑑賞はできない。そこに抵抗感があってはならない」
 創立者の思いを受け継ぎ、装いを新たにした佐野美術館へ、皆さんも行ってみましょう。(大平将広)

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