刀剣界ニュース

第八回金属の歴史国際会議 日本刀を含む金属のさまざまなテーマを研究発表

九月十一日から十五日までの五日間、奈良県文化会館で第八回金属の歴史国際会議(BUMA8)が開催されました。
 この会議は、鉄、貴金属である金や銀、そして銅とその合金など、人類がこれまで利用してきたあらゆる金属について、その鉱石の採取法・製錬法と金属の加工法、さらにそれらを用いた製品である刀剣・武具・硬貨や工芸品などについて、洋の東西を問わず幅広く研究発表する国際会議です。
 これまで、中国・インド・日本・韓国のアジアを中心に四年に一度開催されてきており、日本では第四回以来十六年ぶりの開催となりました。前回の日本での開催は、たたら製鉄が盛んだった島根県での開催ということもあり、たたら製鉄や日本刀について多くの研究報告がありました。
 私も日立金属の研究チームの一員として、短刀九振を作成し、各種鉄素材が日本刀の地鉄に及ぼす影響について詳しく分析し発表する機会を得ました。今思えば、この研究への参加が、私がたたら製鉄を本格的に研究し始めたきっかけだったように思います。
 今回は、巨大な青銅製の鋳造物として有名な奈良の大仏様のおひざ元での開催ということで、ヨーロッパとアメリカを含めた世界十八カ国から銅の発掘調査をはじめ、さまざまな分野にわたり百件以上の研究報告がなされました。
 日本刀関係では、たたら製鉄や砂鉄の還元性に関する研究、鍛錬や卸し鉄の浸炭・脱炭の反応機構の解析などに加え、SPring-8研究施設を利用し、かつて日本刀の素材としても使われたことのある南蛮鉄を非破壊で三次元的に詳しく調査した報告もありました。個人的には、日本刀に中性子線を当て、非破壊で分析調査した北大の研究者の報告に興味を覚えました。
 私はというと、たたら製鉄で銑鉄(ズク)を生産するには、これまで不純物と考えられていた砂鉄中の酸化チタンが非常に重要な役割を果たしており、酸化チタンを多く含む砂鉄を赤目砂鉄と定義すべきであるという考えを発表しました。
 三日間の研究発表を終え、四日目はフィールドワークとして、参加者が二台のバスに分乗し、奈良県無形文化財保持者である月山貞利刀匠と河内國平刀匠の鍛錬場をそれぞれ見学しました。そして最終日の午前中に橿原考古学研究所を見学し、すべての日程が無事終了しました。四年後のBUMA9は韓国釜山で開催することが決定しています。
 私はこれからも研究を続け、日本古来のたたら製鉄法が決して古くさい技術ではなく、これまで知られていなかったきわめて特殊な製鉄技術であったという事実を、広く世界に発信していきたいと考えています。(全日本刀匠会・久保善博)

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