刀剣界ニュース

「大刀剣市」に参加して

「今年は台風らしいね」
 
毎年参加し、慣れているはずの私も、正直、不安を感じざるを得ない。季節外れの台風が直撃するという十月二十五〜二十七日の三日間、一年で一番大きい刀剣業界のイベント「大刀剣市」が開催されました。
 
言うまでもなく、ここ数年の日本の気候は温暖化の影響もあるのか、異常とも言うべき状態で、夏はとことん暑い、雨はひたすら降る、大型台風が何度も上陸する、安定した季節のはずの秋に、多分な気象リスク。懸念を感じざるを得ない状況ではあります。
 
しかしながら、結果としてみれば、風雨に見舞われたのは二日目の午前のみぐらいで、初日は小雨程度、二日目午後から三日目も特に影響を受けなかったのは、誠に幸いでした。
 
特に今年は、公益財団法人日本美術刀剣保存協会の全国大会などと日程的に重なった行事があったことで、全国各地から刀剣愛好家・有識者のご来場をいただけた一面もありました。どのブースも途切れることのないお客さまの対応に大わらわ、活気があり盛況でした。また、今年は外国からのお客さまの来場が特に多かったことも印象的でした。
 
大刀剣市の意義については、出店者の商売が第一ですが、そのほか組合活動の一環として、刀剣全般の啓蒙活動やチャリティーなども含め、さまざまな側面があると思います。
 
私が思う大刀剣市の良いところは、ご近所さん的な感覚で三日間を過ごせることです。普段は離れた町で営業しているのに、このときばかりは「おはようございます」「今日もがんばりましょう」「調子はいかがですか」「明日もよろしくお願いします」などと言葉を掛け合います。
 
文房具の貸し借りに始まって、食事時の店番を頼んだり、時には人手不足の他店の展示手伝いまでも。外国語の得意な出店者は、ほかのブースの通訳や価格交渉に引っ張りだこ。そんな様子は、古き良き時代の連帯感や情さえ感じられて、何だか温かい気持ちになります。この感覚は大刀剣市以外では、なかなか得がたいものではないでしょうか。
 
自分のお店の売り上げが一番、ではあるにしても、お隣のお店も売れていたらいいな、全体が盛況であってほしいな―そんな気持ちになれるのも大刀剣市特有の心地良さから来るものであり、今後もぜひ参加させていただきたいと思うゆえんです。
 
最後になりましたが、早い時期から準備に当たり、最終日までしっかりと運営に尽力してくださった組合役員やスタッフの皆さんに、心からの謝意を表したいと思います。本当にありがとうございました。
(聚楽・中永善之)

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