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上野の森美術館「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」 「刀匠たちが挑んだヱヴァンゲリヲンの世界」ついに東京上陸!

全国で快進撃を続けてきた大人気展覧会「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」が、ついに東京にてお目見えとなった。そのあまりの好評ぶりに、岡山会場を皮切りに、岡崎(愛知)・広島・札幌・福岡・大阪・関(岐阜)を巡回、今なお各地の美術館・博物館から開催のオファーが続いているというヱヴァ展が上野の森美術館にて開催され、新作三点も初披露された。
 
既にご覧になった方も多いと思うが、「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」では、伝統工芸の集合体である日本刀の職人たちが、アニメ「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の世界からインスピレーション受け、現代デザインの日本刀を製作、世に問う、人気アニメとのコラボレーション企画である。愛刀家諸氏の方々からすると、「一体どんなメチャクチャな作品が展示されているのか?」と不安がられると思うが、展示作品のクオリティは驚くほどに高いので、紙上にてその一部をご紹介したい。そもそもストーリーに表れる「ビザンオサフネ」や「マゴロクソード」は、言わずと知れた備前長船と孫六兼元をモチーフにしたものである。刀身は通常コンクールなどで拝見するものと同じく素晴らしい出来であり、かつ斬新な刀身彫刻や形状、カラフルで独創的な拵の数々は、コラボレーションという条件下でなければ生まれることのなかったであろう、全く新しい作品群である。
 
新作に加え、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」のメカニックデザインを務める山下いくと氏が本展のためにオリジナルの刀剣類を描き下ろし。それを刀匠宮入小左衛門行平氏が製作するというコラボレーション企画も進行中とのことで、製作途中の刀身が展示されており、完成が楽しみである。
 
最もその製作に苦心したと思われるのが、三上貞直刀匠とその弟子である金属造形作家、橋本庄市氏により製作された「ロンギヌスの槍」である。全長三三二センチ、重量二二・二キロという巨大すぎる本作は、三上刀匠の従来の工房に収まり切らず、本作のためにわざわざ工房を作り直したという。尋常ならざる力の入れようである。本作にどうしても触れてみたいと、某刀職関係者が手伝いを願い出たほどの優品である。
 
本作の特徴は、生物のDNAを模した二重螺旋構造。最初に二振の刀身を製作し、それぞれに柄をつなげてねじるという手順で完成された。ほかにも刀身の鍛造や電気分解加工などの技術が加わっていて、展示場ではその製作過程をまとめた映像が上映されていたが、多くの者が見入っていた。
 
本展覧会の意義は、今まで日本刀に縁がなかった、特に常々私たちが魅力を伝えたいと思っていた若い世代の人々、それも何十万人という多数に日本刀という美術品を認知してもらえたことに加え、コラボレーションという企画でなければ、誰も想像できなかった(あるいはとても製作が許されなかったであろう)作品群が生まれたことにある。また現代刀というジャンルにも、新たな一石を投じる転換点となったのではないだろうか。
 
なお「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」は今年、独立行政法人国際交流基金の主催により、フランスとスペインでの開催することが決定した。躍進はとどまるところを知らない。
(飯田慶雄)

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