刀剣界ニュース

風向計 其之十三

前号の本欄でも触れたクラブなどでの「ダンス営業」が、ついに規制緩和に向けて今秋にも法制化が検討されているという。既に第十七号をお読みの読者には重複して恐縮ではあるが、昭和二十五年施行の銃刀法(銃砲刀剣類等所持取締令)の刀に対する法運用が、時代に即して緩和の方向に向かうことを願っている刀剣関係者にとっては、うらやましい限りの事例ゆえに繰り返しをいとわず、あえて取り上げてみた。
 
今年の四月二十五日、公安委員会の許可を受けずに客にダンスをさせたとして、風俗営業法違反の罪に問われ、懲役六カ月、罰金百万円を求刑されたクラブ経営者が、大阪地裁での判決公判で無罪を言い渡された。
 
このニュースを聞いて普通の人が思うことは、警察の摘発に遭えば、量刑の如何を問わず有罪は必至であり、現行犯逮捕されたからには無罪放免ということはあり得ないということと、風営法違反で懲役六カ月とは重い刑で、営業停止か罰金では済まされないほどの悪質な常習犯であろうということの二つであろう。
 
ところが、裁判長は、規制の対象となるその営業の内容について「客のダンスの動きなどの具体的な行動に照らし、性風俗を乱す恐れがあるか否かを総合的に判断すべきだ」と指摘し、その時の店内の状況を判断した上で、風営法の規制対象ではなく、許可も必要ないと結論づけたのである。

取り締まりに当たる側も、違法性を具体的に立証する困難さもあったのであろうが、世の中の流れに応じた法運用を行う必要性を認識したのであろう、警察庁は、原則午前零時以降の営業を認めていないクラブなどのダンス営業について、営業時間を翌朝までとする方向で検討することを決めたという。そして、今後、有識者会議の議論を踏まえ、今秋にも風営法の改正案を国会に提出することが決まった。
 
警察庁では、さらに踏み込んでダンスをさせるクラブを、営業時間・地域を限定している「風俗営業」の対象から外すことも検討しているが、周辺住民の環境への配慮から、クラブに騒音苦情等に対する対策を徹底させることなどを規制緩和の条件に盛り込む考えであるという。
 
これを受けて政府の規制緩和改革会議は、安倍首相にダンスをめぐる営業時間の緩和を検討するよう提案したが、これは二〇二〇年東京オリンピック開催に向け、クラブを観光資源として活用する狙いもあり、古屋国家公安委員長は秋の臨時国会での法改正案の提出を目指すことを明らかにしている。
 
法改正と東京オリンピックと言えば、日本ライフル協会などは、銃刀法を改正し、空気銃の使用年齢制限を十四歳以上から八歳以上に引き下げる要望書を国家公安委員会と文部科学省に提出し、オリンピックに向け若年層の育成を強化する環境を整えたい意向を示した。射撃競技に適性や能力がある児童を各競技団体が選定し、八歳から空気銃を使用できるようにすることを求めたもので、火薬を使った銃については通常の十八歳から十四歳に引き下げるよう、併せて要望している。
 
これらの要望が認められるか否かについては今後を見守るしかないが、オリンピックでの成績向上を図るということを機に、射撃人口の減少著しい関係諸団体などが、復活を期して活動を起こしたことに間違いはない。このように、時代の流れや国家の都合を斟酌して法改正が検討される例は、枚挙にいとまがない。
 
銃刀法に関しては、①所持することそのものが禁止されている拳銃などの違法武器の取り締まり、②所持する人にだけ与えられる狩猟用や競技用の銃に適用される所持許可制、③登録を受けた刀剣類等は誰でも所持できる登録制、この三つが一つの法律の中にあるため、テロ等や重大事件の警備対策の強化に登録刀剣までが対象になることもあり、美術品として広く認知されているにもかかわらず、依然としていわれのない厳しい扱いを受けているように感じられる。
 
銃刀法第十七条①の所有者変更届に対する当局の対応に見られるように、美術的価値を認められた登録刀剣は文部・文化行政の一環であり、各都道府県の教育委員会がその管理に当たる立場にあるはずである。しかし、善意の所有者変更の届け出に対して文化財保護の見地としてよりも、登録証が交付される以前の状態と同様の警察管理に安易に差し戻す傾向が見られることがある。
 
これでは、われわれの扱う刀剣が、違法武器や無登録刀剣と同様の印象を受け、所有者変更届の義務のない他の美術品と比べると、所持に関してはあまりにも厳しいものがある。
 
美術的価値のないものは登録刀剣に値しないのは当然であるが、わが国の貴重な文化遺産として価値が認められ、登録証が交付された刀剣は、それでは一体誰が守るのであろうか。国のどの法律で守られるべきものであろうか。国宝・重文には文化財保護法が適用され、その移動には文化庁が乗り出してくるが、国の指定・認定を受けていないその他の刀剣は、まさか警察の管轄ということではあるまい。
 
ダンスの営業も、空気銃の所持も、みんな法律で守られており、時代とともにその法運用に変遷が見られる。刀剣に関する啓蒙は、国の認可を受けている全国刀剣商業協同組合が孤軍奮闘しているが、美術品保護の見地からこれをバックアップしてくれる省庁がなく、その力はあまりにも小さい。所管行政庁の警察庁に訴えてもあまりにも所管が異なり、糸口さえ見つけ得ない。「日本遺産」である刀剣を守るため、一体誰が一緒に立ち上がってくれるのか。
 
刀剣の持つ歴史的・美術的価値や社会的有用性は計り知れない。所持に関する規制緩和は、決して難しい問題ではないと考える。刀剣界全体で大きく正しい動きを起こし、刀に対する認識を新たなものにしていきたいものである。

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