刀剣界ニュース

平成会熱海大会

日本列島で最も早く咲く桜として有名なあたみ桜は、明治四年ごろ熱海にもたらされそうである。開花の時期は一月下旬から二月と、早咲きの寒桜として名高い。そして桜は四月のソメイヨシノへとバトンを渡し、熱海は一年で二度目の春を迎える。
 
そんな熱海の春の最後を締めくくる四月十日、黒潮に運ばれてきた初夏の香りが漂う絶好の季節を迎えた地で、平成会熱海大会が定宿である「あたみ石亭」で盛大に執り行われた。
 
平成会の歩みは古く、前身の諏訪会創立から優に三十年以上を数える。平成会のモットーは堅実の一言に尽きる。これは創立時からの理念であり、その考えは現在も変わることなく受け継がれている。
 
近年続いた事故の余波もあり、昨年は大会の開催自体が危ぶまれたが、役員が一丸となり、この逆境を跳ね返すべく立ち上がった。役員には厳しい売買縛りも課され、まさに背水の陣の覚悟で臨んだ昨年の結果が大成功に終わったことは、いまだに強烈な記憶とともに語り継がれている。厳しい時期だからこそ刀剣界を盛り上げなくてはならないという、役員の方々の気概の勝利であろう。
 
そして今年もまた、もはや伝統となりつつある役員売買縛りの下、平成会熱海大会が盛大に開催された。会場には開始時刻を待ち切れない熱気があふれ、朝十時きっかりに会長代行の橋歳夫氏の挨拶から競りに入った。午前の成り行きから始まり、生ぶ荷に会場は瞬く間にヒートアップ、午前のトリは最上大業物の所載名品で締めた。
 
午後の部の前に、役員の冥賀吉也氏の進行で朝倉万幸会長より、当会の発足以来役員を務めた小澤正晴氏の役員退任が発表され、その功労をたたえての表彰と記念品の贈呈が行われた。小澤氏が今年八十歳を迎えるとの紹介に会場がどよめき、「まだまだ頑張る」との言葉に「自分も負けていられない!」と思ったのは私だけではないであろう。
 
午後も生ぶ荷の成り行きから始まり、重要刀剣や名品の入札もあり盛り上がりを見せた会は、締めてみれば五千六百万円という出来高を叩き出した。
 
これは昨年に引き続き目標を大きくクリアした数字であり、その背景には役員をはじめ会員の方々の並々ならぬ努力と協力があることは明白である。こんな時代だからこその結束の強さを、まざまざと感じた大会であった。
(大西芳生)

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