刀剣界ニュース

シブヤ大学にて日本刀講座開講 若手刀剣人集団「鉄芸」が企画

十一月十六日、東京・表参道にあるバツアートギャラリー(BATSUART GALLERY)のエントランスに日本甲冑が並び、通りかかる多くの人々を驚かせた。日本刀の啓蒙普及を狙い、「シブヤ大学」が「鉄芸」「株式会社studio仕組」とのコラボレーションにより、同大学初めての日本刀初心者講座が実現したのである。
 
鉄芸は日本の素晴らしい伝統文化を楽しく学ぼうというグループで、特に「武士の魂」と言われる日本刀を扱う若手作家・職人・美術商の有志が中心となって日本刀の啓蒙普及を目的に初心者向けの鑑賞会などを企画している。
 
「日本刀を見たことも、触ったこともない人々に日本刀の魅力を伝え、後世に伝える足掛かりとする」との理想の下、今までは小さなイベント会場で鑑賞会を行ってきたが、学校法人の授業として日本刀をカリキュラムにしたい!との希望が当初からあり、多くの支援を得て、同団体のシンボルである「日本刀伝習所」の看板がギャラリー入り口に掲げられることとなったのである。
 
講座のタイトルを「日本刀の魅力を読み解く〜私たちが受け継ぐものとは?〜」として告知を行ったところ、定員三十名のところになんと百名を超える応募が殺到し、会場は立ち見も含めて多くの来場者で賑わった。
 
まず飯田高遠堂の飯田慶雄氏が「はじまりの挨拶」として、日本刀に一礼し、鞘を払うと、会場の空気は一瞬にして引き締まる。講義は日本刀の概要・歴史・精神性などに及び、「日本刀とは単なる武器ではなく、優れた美術工芸品である」と締めた後、実際手に取っての鑑賞が行われた。
 
参加者のほとんどが、生まれて初めて本物の日本刀を手に持つ人々、おっかなびっくりに鑑賞の作法を教わりながら、各人が静かに鑑賞を進める。
 
続いて、刀剣の鍛錬、研磨、白鞘作成といった日本刀製作の各工程を、現在活躍している刀匠の石田國壽氏、研師の森井鐵太郎氏、鞘師の森井敦央氏らが実演をしつつ解説した。
 
最後に、アートディレクターの小熊千佳子さんが加わり、この日にお披露目された日本刀と3Dプリンターで製作したアクリル製「澄鞘(Sumisaya)」を例に、伝統工芸・伝統文化と現代につながるデザインの面白さについて語り合った。
 
授業終了後も、閉館の六時まで来館者が途絶えることなく、多くの人々が初めて触れる本物の日本刀に感嘆の声を上げ、熱心に質問をぶつけていた。
 
授業の最後に行われたアンケートによると、参加者の大半は三十代から四十代で、授業の評価も見事に全員が最高評価をつけたとのことで、大学担当者によるとこれは非常に珍しいことだという。
 
講師の飯田氏いわく「百聞は一見に如かず。老若男女を問わず、名刀を実際に手にしてもらえば、その素晴らしさはおのずと伝わります。将来は小学校などでも同様のイベントを行えればと思っています。また今回のイベントが可能だったのは、鉄芸の趣旨に賛同していただき、ギャラリーを無償で提供してくださったオーナーの松本瑠樹さん、取りまとめとスポンサーになっていただいた株式会社studio仕組の河内晋平さんのご協力によるところが大であり、厚くお礼申し上げます」
 
このような草の根活動が将来の愛刀家を作り、伝統文化の担い手を育成する大きな力となるだろう。
 
がんばれ、鉄芸!!

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