刀剣界ニュース

公財)日本美術刀剣保存協会ロシア支部より ロシア武道連盟へ太刀を寄贈

昨年は、日本・ロシア両国首脳によって取り決められた「日露武道交流年」となり、記念事業として多くの武道の交流が、両国の各都市で行われました。
 
刀剣業界においても、昨年十月公益財団法人日本美術刀剣保存協会ロシア支部の主催で日本刀古式鍛錬実演会がモスクワ市内で開催されることになり、現代若手刀匠四名がロシア支部の招待を受けて現地に趣き、古式鍛錬をロシアの人々の前で公開実演しました。
 
限られた時間内で見事な太刀を製作したことは、本紙二十号で紹介しました。その後、ロシア人刀職者により鎺と白鞘が製作され、研ぎが施されました。
 
この太刀の諸工作に携わったロシア人刀職者の方々は特別な経緯で製作された太刀であるために、いつになく細心の注意を払って取り組んだと、感慨深げに話されていました。
 
完成した太刀は、当初よりロシア武道連盟へ寄贈することになっていましたが、六月三日にクレムリン宮殿内で開催されたロシア武道連盟総会のオープニングの席で、正式にロシア支部よりロシア武道連盟に贈呈されました。
 
ロシア武道連盟からは、ロシアで初の正式な鍛錬によって製作された太刀を寄贈される栄誉に対して、ロシア支部へ深い感謝と感動の言葉が寄せられました。
 
ロシア支部がこのような両国の公認事業に参加できたのも、ご支援とご後援をいただいた公益財団法人日本美術刀剣保存協会、在ロシア日本大使館、そのほか多くの皆さまのおかげであります。また古式鍛錬会に参加いただいた工藤将成(群馬)、田中貞徳(千葉)、高橋恒厳(群馬)、吉田康隆(山梨)の四刀匠の並々ならぬ尽力の賜物であり、あらためて感謝を申し上げたいとのことでした。
 
ロシアの皆さまには日本刀の古式鍛錬を併せて見ていただいたことで、今後は玉鋼という日本古来の特別な鉄を使用し、炎と土と水の力を得ながら製作する姿を思い出しながら、作品を深く鑑賞していただけるものと期待しています。
 
本事業の目的の一つとして、ロシアにあって錆び込んでいる日本刀を救済する活動につなげていくことが掲げられていますが、今後の進展を見守りたいところです。
 
この度の太刀を贈呈する記念式典を終え、「2014年日露武道交流年」記念事業・日本刀古式鍛錬実演会すべてが滞りなく完了したことを報告します。
(嶋田伸夫)

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