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殺到 根津美術館「江戸のダンディズム〜刀から印籠まで〜」 コレクション展に若い女性客らが殺到

根津美術館は、東武鉄道の社長などを務めた実業家・初代根津嘉一郎(一八六〇〜一九四〇)が収集した日本・東洋の古美術品コレクションを保存・展示する美術館として作られ、国宝七件、重要文化財八十七件、重要美術品九十四件を含む、七千件を超える大コレクションを収蔵している。
 
根津コレクションには、茶道具もさることながら、仏教絵画・写経・水墨画・近世絵画・中国絵画・漆工・陶磁・刀剣・中国古代青銅器など、あらゆる分野の一級品が揃っているが、本展覧会は同館の所蔵する刀剣・刀装具・印籠のコレクションから選りすぐりの百点を展示するものであり、連日多くの来場者で賑わっている(七月二十日まで)。
 
同館での刀剣・刀装具のコレクション展は非常に珍しく、多くの刀剣ファンにとってはなじみの薄い美術館かもしれないが、根津嘉一郎氏が光村印刷の創業者である光村利藻氏から譲り受けた(世にいう龍獅堂コレクション)を基幹に据えたその収蔵品は、非常に層が厚く、また優品揃いでもある。
 
本展覧会でも、太刀重要美術品銘長光や短刀銘城州埋忠作/天正十八年十月日、太刀銘月山貞一造之/明治三十六年春など鎌倉時代から明治まで、その多くに濃厚な彫物が添えられた華やかな十七振の優刀に始まり、豪華絢爛な細太刀拵や、最高峰の金工師や蒔絵師の手による各種拵が一面を飾り、横谷宗珉・後藤一乗・一宮長常・加納夏雄などコレクター垂涎の名工たちの刀装具のコレクションへと続いていく。
 
多くの女性客や若い観覧者が目を輝かせながら列を作る様子は、表参道という好立地に、隈研吾氏の設計による美しい展示棟、刀剣鑑賞用に特設した照明による見やすい展示を可能とした同館の特色に加え、昨今のブームにより各種メディアでも取り上げられている「刀剣乱舞」などの影響でもあろうか。
 
六月六日に行われた渡邉妙子氏(佐野美術館館長)の講演会は、百三十人定員の講堂がいっぱいになる盛況で、毎週行われる各種講演会に加え、初心者を対象とする事前受付制の特別催事も好評であり、筆者が刀職者有志とともに行った「はじめての刀剣鑑賞―マナーを学んで刀を持ってみよう」などは開館初日十分で申し込みが定員に達し、かつその八割が女性からだったから、大いに驚かされたものである。
 
優れたコレクションが一般の目に触れる機会が増え、また啓発活動も盛んな同館の存在は刀剣界に生きる者としては非常にありがたく、これからもその動向に注目していきたい。
(飯田慶雄)

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