刀剣界ニュース

日刀保と当組合とが意見交換

公益財団法人日本美術刀剣保存協会(小野裕会長、以下「日刀保」)と、当組合との会談が去る六月二十六日に持たれました。
 
日刀保から小野会長・柴原勤専務理事・志塚徳行常務理事が出席され、組合からは深海理事長・飯田前理事長・清水専務理事・伊波常務理事と筆者が出席しました。
 
小野会長より深海理事長に対して、五月に行われた組合の第二十八回通常総会において理事長に選任され、三期目を迎えたことへのお祝いの言葉をいただきました。
 
日刀保においても、六月二日任期満了による役員改選が行われ、小野会長があらためて会長に就任されましたので、深海理事長より祝辞を述べさせていただきまし
た。
 
小野会長は、運営責任者の立場で、深海理事長は組合の牽引者として、平成二十三年に時を同じくして代表に選出されていることから、業界の発展を誰よりも強く切望しており、相互に共通するものがあるようです。
 
また、会長就任後、直ちに新公益財団法人の認可に向けて動き出し、認可後は多くの案件を、現執行部の強い協力の下に次々と実行してきました。
 
その後、墨田区の旧安田庭園・両国公会堂跡地に刀剣博物館を移設するという大事業に取りかかり、現在は基本協定を締結し終え、平成二十八年三月着工、二十九年春完成予定で進んでいます。 「日刀保の移転は刀剣業界全体の慶事であり、新刀剣博物館の開館後は日刀保にとどまらず、業界各団体の新たな活動と情報を相互に生かして行けるような場所にしていく考えでいますので、この度の移転を業界全体で祝っていただきたい。今期は新博物館の建設を前に、今まで以上に業界にどれだけ貢献できるか、業界の未来を見すえて取り組みたい」と、会長の力強い発言がありました。
 
日刀保の重要な業務である刀剣・刀装具類の審査は、いつの時代も水準を維持しながら厳格な審査が求められていますが、今後、学芸員の定年退職などに伴って鑑定力の低下があってはならないとする話となりました。組合や関係機関の意見を取り入れて、そのような案件にも機敏に対処していきたいとのことでした。 「刀剣女子」などの新語まで生まれるブームが起こり、刀剣関連の書籍も盛んに出版されていますが、刀剣業界がこのブームを牽引してきたわけではありませんから、今のところ、業界にさほどの好影響はありません。しかし、これから業界を支えていく若い人材に、業界主導で新たな発展の道を残していけないものかとは誰もが考えるところです。
 
例えば、自分好みの刀剣をオーダーして現代刀匠に製作してもらい、それを友達同士で鑑賞し合うような刀剣新人類が現れてもらいたいものです。そこで、新刀剣博物館に常設の鍛錬場を設け、定期的に鍛錬を公開すれば、日本刀の存在をさらに確かなものにしていけるのではないかという話題になりました。
 
柴原専務より、「墨田区の条例で、庭園内にては火気類の使用が一切禁じられており、現在も希望は抱いているが、実現は難しい」と説明がありました。一階に開設予定のカフェハウスでも、すべて電気による調理器材を使用するようです。しかし、いずれは博物館において公開鍛錬が可能となるよう、日刀保の現執行部の交渉力に期待します。
 
社会と刀剣との距離が必ずしも近いとは言えない現状で、組合は常々刀剣商の社会的地位向上を目指して課題に取り組んでいます。「押し買い」などの強引な買い入れが横行している現在、売り主が安心して売却先を選べる基準が強く求められています。深海理事長の発案である純正な鑑定システムがまさにそれであり、刀剣の鑑定と美術的価値を的確に判断できる組合員を対象とする認定制度を提案しました。
 
ただし、これを組合のみの尺度で認めるだけでは、認定基準への信頼性が不十分なため、日刀保の意見を伺い、合意が得られれば、両団体の共催する認定制度としてはいかがかと申し上げました。
 
現在の日刀保には、新刀剣博物館の移設を前にして、「和」の精神を尊び、かつ実行してゆく姿勢に並々ならぬものがあります。数次にわたる組合との会談が「有言実行」をも物語っています。
 
日刀保と組合とがそれぞれに持ち得る情報と意見の交換を定期的に行い、今後の業界の発展に生かしていくことを相互に確認し合い、この度の会談も有意義に終えました。
(嶋田伸夫)

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