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盗難の酒井家名刀が三十年ぶりに里帰り、返還はかなわず

昭和六十一年に旧庄内藩主・酒井家から盗まれた重要文化財「備州長船住元重」が、山形県鶴岡市の致道博物館で開催されている企画展「出羽庄内藩酒井家の遺宝」で展示され、約三十年ぶりの「里帰り」と話題になっている。
 
本刀は長船派の名工、初代元重が作った約七十センチの刀。金象嵌銘の「見返」は、切られた人が振り返ってからバタリと倒れたという伝承に由来する。酒井家十七代当主・忠明さん(故人)の蔵から同じく重文の短刀「粟田口吉光」とともに盗まれた。  窃盗犯はその後捕まり、吉光は平成十一年に致道博物館が買い戻したが、転売された元重は長らく所在不明だった。昨年所在がわかったが、約一億円という値がついたため、酒井家は買い戻しを断念。大阪のコレクターが酒井家の承諾を得て買い取っていた。
 
民法の定める無償返還請求期間は盗難から二年以内となっている。
 
今回の「里帰り」は、買い取り当時から大阪のコレクターが申し出ていたもので、いかにも愛刀家らしい美挙とたたえられている。
 
企画展の会期は八月二十二日〜九月二十八日だが、元重は九月一〜二十八日の期間、短刀の吉光と並べて展示される。
 
現当主で致道博物館館長の酒井忠久氏は「亡き父が見たら本当に喜ぶと思う」「元来の所有者に返還請求が認められている英米並みの制度になるよう、これからも働きかけていきたい」と話している。

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