刀剣界ニュース

刀剣商リレー訪問 稲留 修一さん 遺志を継いで頑張る二代目店主

今回は、神田に店を構える舟山堂と稲留修一さんをご紹介します。
 
開店は昭和五十一年で、九段下の徳海屋ビル一階にありました。当時の店名は正見堂と言い、山田均さんが社長でした。刀剣柴田の大番頭として長く、刀剣柴田の歴史を見てきた方です。刀剣商らしからぬ学者肌で、店にいるときは本を読んでいるか、タバコをくゆらしている姿しか見た記憶がありません。本名は「ひとし」ですが、音読みで通り、「ヤマキンさん」で親しまれていました。
 
昭和五十四年に稲留さんが入社し、営業を担当されました。稲留さんの生まれは鹿児島県で、芯が強く、まさに薩摩隼人そのものです。目利きでもあり、山田さんの片腕になっていました。
 
平成六年、正見堂は舟山堂に社名を改めました。山田さんの故郷である伊豆の舟山に由来するものです。同八年、飯田橋に移転し、十五年に現在の神田に店を構えました。地下一階のこぢんまりしたお店ですが、古名刀や刀装具の名品を扱い、お客さまも目の肥えた方が多いようです。
 
舟山堂の一大事業と言えば、準備期間を含めると約十年を要した『日本刀重要美術品全集』の出版が挙げられます。これは、証書の紛失の多い重要美術品の刀剣にとって貴重な情報源であり、画期的な書籍でした。業界では今も大いに活用されています。
 
残念ながら、山田さんは四年前に亡くなられました。その後を稲留さんが継いで、奮闘しておられます。
 
山田さん、稲留さんともに研究熱心で、舟山堂では今も年六回、神田刀剣会と称する研究会を開催しています。講師は広井雄一先生で、時代や流派ごとに懇切丁寧な解説をしてくださいます。毎回、二十数名の参加者が和やかに刀を楽しんでおられます。
 
お気軽に舟山堂と神田刀剣会へのお越しをと、店主は申しています。
(藤岡弘之)

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