甲冑武具

鉄黒漆塗切付小札萌黄地日の丸文威二枚胴具足
Genpuku Gusoku

鑑定書内容:社団法人 日本甲冑武具研究保存会 重要文化資料
Certificate:Japan Kacchubugu Research and preservation Juyo

鉄黒漆塗切付小札萌黄地日の丸文威二枚胴具足Genpuku Gusoku
  • No.D112
  • 鉄黒漆塗切付小札萌黄地日の丸文威二枚胴具足
  • Tetsu Kurourushi nuri Kiritsukekozane Moegiji Hinomarumon odoshi Nimaidou Gusoku
  • 江戸時代中期 17th Century
  • 価格:¥11,000,000

江戸時代中期に制作された元服用の鉄黒漆塗切付小札萌黄地日の丸文威二枚胴具足。
元服前の子供の為に制作された甲冑を童具足と呼称している。古来名だたる名将の嫡子に制作されたもので、当時でもよほど武事に熱心で、かつ裕福な大名でないと制作が叶わなかった事より、制作数そのものが甚だ少なく、かつ上記の事情により、残された作品はほとんどが大大名からの注文作であることから、頗る小型であるにもかかわらず総じて本格的に、むしろ大人用よりも贅を尽くして制作された入念作が多く、その資料的貴重さと相まって古来より大変珍重されている。
本作は通常の甲冑に比しては小振り、童具足としてはやや大型であり、現代で言えば15歳頃の子供用に制作されたものかと思われ、櫃書には「萌黄糸威日之丸胴元服具足 柏原藩織田家伝来」と書付が残されている事よりまさに元服の祝いに贈られた「元服具足」ともいうべき作品である。同手の作品に上杉家伝来の「白糸威紅日の丸紋柄着初具足」があろ、上杉家歴代嫡子が着初めに着用したと言われる具足で、同寸、同意匠であり、同じような伝統が大大名家にて通例として行われていた証左である。元服とは古くは奈良時代から日本に於いて成人を示す通過儀式として行われ、江戸時代の武家に於いては確定した時期はなく、おおよそ数え年で12歳から16歳の男子が前髪を剃って月代にすることで一人前と認められたようである。武家の男児が一人前となった誉れ高き日に用意されたとみられる本作は通常よりもやや小振りなれど流石に実践に耐えられる様、すこぶる入念に作られた具足であるが、胴回りや面具の寸法(胴幅30cm、面幅13cm)より察するに着用者は大人というにはまだまだ幼い体躯であったと思われる。良家の跡取りとして、幼少より文武に励み、やっと一人前と認められた事への誇らしさと、一人前の当主なるべく将来への希望に溢れて胸を張るまだまだ幼顔の若武者と、一方それを大いなる期待と、同量の不安を持って見守る親心から精一杯の贈り物をこしらえた両親の思い・情景が想起され実に微笑ましい一品である。

Return Top