鑑定書内容:財)日本美術刀剣保存協会 特別保存刀剣[N.B.T.H.K]Tokubetsu Hozon Token
- No.826
- 作者:龍泉貞次(人間国宝 高橋貞次 )
- 銘文:鍋島景光ニ倣フ源貞次作彫同作 (花押)紀元二千六百一年八月日 備州長船住景光以余光鉄 元享三年二月日 為井内彦四郎氏作之
- Maker:Ryusen Sadatsugu(Living National Treasure)
- Sign:Made by Minamoto Sadatsugu Imitate to Nabeshima Kagemitsu A.D.1941 Bishu Osafune ju Kagemitsu A.D.1323 order from Iuchi Hikoshiro
- 種別:短刀 Tanto
- 寸法:8寸6分弱(26.0cm)反り 0.0cm 元幅 2.5cm 元重0.6cm
- 時代:昭和ー(愛媛県)
- 価格:御売約 Sold Out
重要無形文化財保持者(人間国宝)高橋 貞次刀匠の名物 鍋島景光写しの作品。
高橋貞次は愛媛県出身の刀匠で、大正年間より古刀の作風を研究し、五ヶ伝に精通した。1938年第一回刀剣展にて内閣総理大臣賞を受賞、戦後は皇室関連の作刀を多数行い、伊勢神宮式年遷宮の御宝御神刀を鍛え、1955年、これらの活動と成果が評価され、人間国宝に認定された。刀匠としては初の人間国宝である。受賞後の1959年、今上天皇成婚に際して美智子皇太子妃(当時)の守り刀を鍛える。その後1965年の礼宮文仁親王に至るまで、美智子皇太子妃所生の皇男子の守り刀を鍛え続けた。
本作は貞次が井内彦四郎氏の注文により、肥前鍋島家の家宝で重要美術品に認定されている名物、鍋島景光の短刀を本歌として制作された作品である。身幅尋常で景光の作品としては稀有な片切刃の体配を見せた非常に特徴的な作であり、地鉄は微細につんで美しく、刃文は小沸出来の小丁子乱れに強い金筋・砂流しを見せ、二重刃がかるなど、同作の高い技量を遺憾なく発揮した優品である。注文者の井内彦四郎は高知県出身の実業家で参宮急行電鉄路線拡大の先導役となった大人物で、本作は紀元二千六百一年(1941年)の年紀作であるが、同氏はその前年に同社の名古屋延伸という夢を叶え退職している。同年本歌の鍋島景光は靖国神社遊就館で開催された「二千六百年奉祝名宝日本刀展覧会」に出品されている事から、同地にて鍋島景光を見た氏が感銘を受け、大事業を果たした自らの記念として貞次に注文したものかとも思われる。同氏の偉大なる経歴と愛刀精神を今に伝えてくれる素晴らしい傑作である。
なお本作と同意匠の作品として鍋島家の御抱工として活躍した肥前忠吉の脇差(特別重要刀剣)、本歌の景光元亨三年(重要美術品)の8年前、来国俊正和四年の年紀を有する短刀(重要美術品 加賀前田家伝来)の存在が知られている。