鑑定書内容:財)日本美術刀剣保存協会 重要刀装具[N.B.T.H.K]Juyo Tousougu No.50

- NO.B267
- 無銘 神吉深信
- 江戸時代後期
- 法量:縦:79mm 横:78.5mm 厚:5.3mm
- 価格:御売約 sold out
江戸時代隆盛を誇った肥後国林派の神吉深信の重要刀装具指定作品。深信は寿平忠光の長男として天明六年(1786)に生まれる。はじめ国平と名乗り、文政四年(1821)父の没後に寿平と改名した。神吉家は林又七の流れであり、初代寿平正忠の時、藩命によって林家に入門し、肥後細川家の抱え工となった。忠光を初代として深信を二代、楽寿を三代として幕末にあって肥後金工の掉尾を飾った。
本作は茎櫃孔上下の所謂隠鏨から神吉二代深信の作と鑑せられる。肥後林派を踏襲した紫錆の細美な地がねをもってこれも林又七以来掟物の「八つ蕨手」と言われる図取りを緊密に透かし穏やかな平肉をもつ平地に切羽台を中心に金の沙綾文を極く細かく象嵌し、耳にも細川九曜紋と二重唐草を本象嵌としている。落ち着いた錆色に細い金象嵌が映え、誠実な作風と相俟ってこの鐔の気品を高めている。本歌である又七と比較すると、肉置き、鉄地の鍛え、象嵌手法など、細部に置いて深信独自の工夫が散見される。同作中の白眉と称される又七写しの傑作である。