刀剣界ニュース

風向計 其之四

刀剣界の景気

景気に関する最近の報道を見ると、景気動向指数をはじめとする主要経済指標のほとんどが悪化傾向にあり、まさに日本経済の先行きは暗いと言わざるを得ないが、過去に何十年さかのぼってみても、景気は拡大と後退を繰り返すのが常で、景気の下方修正がすぐさまわが業界に影響するものでないことは、過去の例からも明らかである。
景気転換点は、拡大期から後退期への山と、後退期から一転して拡大期を迎える谷とがあり、最近の日本経済はリーマンショックを挟んだ平成二十年三月から一年間景気後退の後、二十一年四月から景気拡大局面が続いていたとされ、本年二十四年四月以降は後退に入ったという。
しかしわが業界に限ってみると、リーマンショック以来、相場が下落して同業者のマインドも縮小し、デフレ傾向からの脱却が図られておらず、とても三年前から景気拡大局面の恩恵を受けているとは実感できない。業界の景況は相変わらず底辺を推移しているが、このようなことは過去に何度もあり、他業種に比べれば危機的な状況とはほど遠い、恵まれた環境にあると言い得よう。

刀剣界の事情

今年の春以降、業界の規模が縮小したかのように感じるのは、決して景気のせいばかりではないであろう。業界内の特殊事情、つまり廃業者の続出を見たからであり、このようなことは好況期にも起こり得ることであり、ネガティブに考え過ぎないことである。なぜならば、業界の不安とは裏腹に、われわれの顧客ははるかにポジティプな思考の持ち主である場合が多いからである。
好不況にかかわらず、刀剣・鐔小道具・甲冑類を趣味としてこれを収集するわれわれの顧客は、世に言う「勝ち組」の富裕層で、自らの余裕のある資金でモノを買い、決して無理をしない健全思考の人が多く、高額商品になればなるほど、その傾向が強まる。カードを使う顧客も資金がないからではなく、欧米型の習慣による場合が多く、ローンを利用する人も堅実な資金計画に基づくからこそのものであろう。
それ故に、デパートやスーパー等の小売業とわれわれの業種が同日に論じられるものではなく、どのような時代になっても勝ち組の富裕層を相手の商売であるが故に、長いスパンでの山と谷はあっても、成り立っていかなくなる場合はないのである。
現に、今年の「大刀剣市」の入場者数は昨年の二千八百七十人を上回る二千九百九十六人(いずれもチケット入場者数)を数え、愛好家そのものが減少していない事実はわれわれ業界の最大の強みでもある。
業者がいくら張り切っても、笛吹けど踊らずという顧客の状況が続くならば展望はないが、値設次第では買うという多数の積極的な顧客を前にして自ら萎縮していたのでは話にならない。
リーマンショックならぬ業界特殊事情ショックから一日でも早く立ち直り、このありがたい商売に前向きに取り組むべきではなかろうか。既にそのように軌道修正している業者もいる。遅れてはならない。

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