刀剣界ニュース

真のチャリティー

 東日本を襲った大地震と、それに伴う太平洋沿岸一帯の大津波、さらにはその影響による原子力発電施設の損壊から派生した放射能被害。多くの死傷者を数え、今なお仮設住宅や他府県での避難生活を余儀なくされている被災者の数も多く、わが国はまさに未曽有の大災害に見舞われてしまった。
 被災者や、復興現場で困難な作業に当たる人たちに対する国民の関心は高く、多方面から、一日も早い復興に向けての議論が展開されていることは、報道により日々情報がもたらされている。完全復興は巨額の資金を要し、国を挙げての取り組みが不可欠であることは論を俟またないが、この危機を目の当たりにし、民間の団体や個人の支援活動も震災発生直後から活発に行われていることも周知のとおりである。
 身をもって奉仕活動を行うボランティアと、資金などを提供するチャリティーがその代表的なものであり、自発的に、報酬を求めず、復興に役立ちたいという精神は共通なものであろう。
 さて、私たち刀剣商は、今回の大災害に対してどのような支援活動を行うことができるであろうか。被災地に入って復旧作業を手伝う以外に成し得ることは、やはり自らの資金やモノを無償提供することがその手だてであると言い得よう。
 著名な芸能人やスポーツ選手などのチャリティー活動は、枚挙にいとまがないほど報道されているが、ここで考えさせられるのは、一般的に言われているチャリティーとは、誰も損をしないということのようにも思える。もちろん、街頭に立ち募金を呼びかけ、コンサートを行い、野球やサッカーの競技を行うからには、著名人としては貴重な時間を失うことになり、損害が皆無であるとは言えない。しかし、それらは逐一報道され、称賛を浴びる。
 著名人のチャリティー活動に参加する人たちは、その満足に対して入場料や参加費という対価を支払うが、それは決して損失ではない。オークションと称する催しでは、著名人愛用の品は飛ぶように売れるが、もともとは用具メーカーからの提供のものであったり、今はもう使用しないものである場合も多いであろう。
 このように双方が実害の少ない範囲内で行う慈善活動を今日、チャリティーの名で呼ぶことが多い中で、今回行う組合主催のチャリティーオークションは個々の組合員の痛みと誠意の伴う真のチャリティー活動と言うことができはしないか。
 名もなく、格別に裕福であるとは言えない一組合員が、自らの持ち物である商品を被災者の救済や支援の目的で無償で出品し、その売上金のすべてがこれに充当される。どこにも報道されず、誰からも賛美されないこのような慈善行為こそ、真のチャリティーと言えはしまいか。 
 私たち刀剣商の社会的地位や評価に対して、私たちは常に不満である。しかし、世間の皆さんちょっと待ってくださいよ、と言いたい。私たちをナメたらあかんぜよ、と言いたい。こういう刀屋もようけおるんぜよ、と言いたい。新聞やテレビで報道されている著名人のチャリティー活動の売上金は、一体いくらだ、とも聞きたい。
 私たちの今回の活動は次号の『刀剣界』に取り上げられるであろうが、気持ちにおいて、金額において、著名人に遜色を見せない結果になるであろうことは予感し得る。自賛の謗そしりを恐れずあえて言わせてもらうならば、刀屋は素晴らしい。

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