刀剣界ニュース

日刀保「新作名刀展」授賞式が開催される

五月二十九日、公益財団法人日本美術刀剣保存協会四階講堂「まぼろしの国宝、ニッポンに帰る」と題して、「ボストン美術館日本美術の至宝展」が三月二十日から六月十日まで、東京国立博物館平成館において開催されました。
 ボストン美術館には日本美術の収蔵作品が十万点を超えると言われ、その中から選りすぐった九十二点が今回展示されたものです。
 中でも話題になったものの一つに、「平治物語絵巻」三条殿夜討巻が挙げられます。この絵巻は、平安後期の平治元年(一一五九)に起こった平治の乱を鎌倉時代に詞書と色彩豊かな絵画によって描いたもので、特にこの巻は日本絵画史上最も迫力ある合戦絵巻と言われ、三条殿の急襲と後白河上皇の拉致を見事に表現しています。  私が展覧会を見学に訪れたときは、NHK大河ドラマ「平清盛」で保元の乱(平治の乱はこの三年後に起こる)が二回にわたって放映されていた時期でもあり、テレビの映像と絵巻が重なり合い、武士たちの着用した大鎧や腹巻、武具類の弓矢・太刀・長巻等々、非常に参考となりました。
 特にこの当時は、主力武器は弓矢であり、また長巻が非常に多く描かれていたこと、下級武士たちは太刀でなく刀を差していたことなどが描かれており、参考になりました。ともあれ、この絵巻はまさに国宝に匹敵する名品であります。において、平成二十四年「新作名刀展」の授賞式が行われました。
 本展覧会は、現代作家の製作した現代刀がいかに魅力を持ち、後世への遺産としての価値を内包しているかといった情報発信の場とも言えます。
 今回は、無鑑査十三点を含めて五十点の出品がありました。審査の結果、最高賞の日本美術刀剣保存協会会長賞には、作刀で宮崎県の松葉一路(國正)さん、彫金で宮城県の羽川安穂(左一光)さんがそれぞれ受賞されました。
 主催者の日刀保・小野裕会長絵巻ではもう一点、「吉備大臣入唐絵巻」が出展されていました。大正十一年(一九二二)、この絵巻が国外に流出したことが問題となり、古美術品の海外流出を防止する法整備のきっかけとなった名品でもあります。
 ボストン美術館にはまた、数多くの刀剣類が収蔵されております。ビゲローが明治初年に来日して買い求め、その後ボストン美術館に寄贈したものが大半であります。今回は安綱の太刀、備前国長船景光の太刀、備前長船住兼光の太刀をはじめ、短刀では来国俊、文保年紀の尻懸則長、ほかでは梨子地鳳凰螺鈿金装飾剣など十二点が展示されました。
 そのほか、仏教美術では奈良・平安期の仏画、江戸期の絵画では長谷川等伯・尾形光琳・伊藤若冲らの.風、中でも曾我蕭白のものは十一点も展示され、見応えがありました。
 今回の展覧会には東京会場のみで五十万人を超える方たちが訪れており、いかに人気が高く、充実した展覧会であったかを物語っています。
 なお、今後は、名古屋ボストン美術館にて前期六月二十三日.九月二十九日.十二月九日、九州国立博物館にて平成二十五年一月一日.三月十七日、大阪市立博物館にて四月二日.六月十六日にそれぞれ開催されます。是非とも見学されることをお勧めします。(冥賀吉也)
主催者の日刀保・小野裕会長からは、「刀剣界を取り巻く昨今の厳しい環境下、刀職者への協力は惜しまないので、さらなる技術向上に向けて努力をお願いしたい」と挨拶がありました。
 受賞者を代表して松葉刀匠からは、「日本刀の技と心を次の世代に伝えていくことが困難になりつつある中、石にしがみついても初志を全うする覚悟であるので、一層のご理解、ご助力をお願いしたい」と答辞が述べられました。
 なお、薫山賞を受賞された山口県の杉田昭二(善昭)刀匠には、出品後に他界されました。ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 受賞者は次の通りです。

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