刀剣界ニュース

エヴァファンに日本刀はアピールできたのか

前回、戦国BASARAというテレビゲームとのタイアップで成功を収めた備前長船刀剣博物館が、七月十四日から九月十七日まで「エヴァンゲリヲンと日本刀展」を開催しているというので、行ってみた。
 開催二週目で来場者が一万人を超えるほどの盛況と、長船の町全体で盛り上げているイベントの熱気にまず驚き、週末でもあったので、多くの家族連れやエヴァファンに出会うことができた。
 今回の展覧会で特筆すべきは、今までは歴史上の人物や日本刀の伝統を元にアニメやゲーム、小説などのフィールドで展開していくことが多い中、反対にエヴァンゲリヲンの世界観に日本刀の製作技術や伝統をはめ込むといった新しい試みである。
 空想上のキャラクターの守刀を一八点も具現化した刀匠や職方は、エヴァンゲリヲン自体知らない方が多く、まずはエヴァの映画を見ることから始まり、そこに出てくる武器・防具を日本刀製作技術をもって創作していくという全く新しい製作過程である。
 中でも一番の大作である「ロンギヌスの槍」という作品は、ダマスカス鋼(ステンレス、ニッケル、コバールを合金した鋼)で全長三三二センチにも及び、鋼を鍛錬することに熟知している刀匠にしか製作できないと思えた。
 ほかにも成形自由な合成樹脂を使用した拵や、キャラクターの服や髪色に合わせた塗り、柄巻きなどの新しい挑戦は、職方の持てる技術を別の次元に昇華していた。その多数の作品や展示されているオブジェによって、まるでエヴァンゲリヲンの世界に自分が現実に存在しているかのようにすら感じたものだ。
 そして何より今回の試みの狙いとして、一般の人にとってわかりにくく、敷居が高かった刀剣のイメージの全く違った扉が開かれ、刀剣に全く興味のなかった来場者が、エヴァンゲリヲンの世界を通じて刀剣製作の技術や伝統に感嘆するという事実を目の当たりにした。
 これから日本刀文化を普及する方法がさまざまな形で自由に発展する可能性を感じながら、本当の意味での伝統を守っていけるよう、伝統と革新を両立させたいと決意した展覧会であった。(玉山真敏)

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