刀剣界ニュース

訪問購入にクーリングオフが適用。違反者は行政処分も! 特定商取引に関する法律の一部改正施行される

本紙第八号でお知らせした特定商取引の一部改正が、平成二十五年二月二十一日施行された。
 社会問題にもなった貴金属類の押し買い被害に端を発した本件が、消費者保護の観点から特定商取引法に広がり、販売だけでなく買い取りにもクーリング
オフ(契約決定後八日以内に取引差し戻し)が可能な法改正である。
 施行前日の二月二十日、消費者庁主催で同法改正の説明会が港区三田で開催され、筆者も出席した。事前申込者限定であったが、会場は約百名の参加者で埋め尽くされ、関心の高さがうかがわれた。
 法令担当者のよどみない一時間半の説明、厚みのある資料、予定時間を超える質疑応答と、実に中身の濃い説明会となった。そこで明らかになったのは、美術・古物業界の動きを含めて次のようなものである。まず、その買い取りが来店(持参)されてのものか、訪問
によるものか、に大別される。特定商取引は、訪問して消費者へ役務、商品の提供・受理を対象としているので、消費者の意思による来店取引、加えて業者間取引は、対象外となる。
 この訪問の方法が、重要だ。訪問時、明確に商品を「確定」し、査定金額に関わらず買い取りを希望する場合は対象外だが、実際商品を見ないと評価額は算出できず、「査定金額の結果を聞いてから、売却するかしないかを決める」との問い合わせには、査定行為が優先され同法の対象となる。
 実際の刀剣訪問買い取りは、次の通りとなる。
 事業者名、対象の物品が「刀」であること、「評価および購入に来た」ことを宣言する。ここで宣言していない貴金属が査定中に出てきても、買い取ることはできない。
 物品の種類、購入価格を入れた書面を提出する。書面には八日間のクーリングオフについての記載が必要。口頭の補足が奨励されている。
 もし査定額に同意いただけない場合、再勧誘は禁止。その場で、また後日の執拗な催促は厳禁である。 
さらに売買成立(代金支払い)後八日間は、たとえ搬出されたものでも、費用請求なしに解除・返却希望に応じなければならない。この八日間は、意思表示からなので、中止要請が郵送できた場合、記入投函日から有効となるため、実際は数日増えるだろう。八日以内に店頭や市場で第三者に販売する場合、期間内に返品要請の可能性を売り先に示す義務もある。
 なお、次の物品は消費者が利益を損なわない、また流通が著しく害される恐れがあるとして除外された。自動車(二輪を除く)、アンティックを除いた家具、大型家電、書籍・CD・DVD、有価証券(商品券)。  また、消費者が「金額にこだわらないので買い取りに来てほしい」と言った場合や、常連客(店舗で一回、店舗以外で二回以上の取引が過去にある場合)は適用に当たらない。
 われわれは、鎧や槍などの大きな品物が除外されず、返品リスクがあることは残念であるが、美術品は過去にトラブルが記録されているようで、除外物件にはならなかった模様である。
 なお本誌読者は、悪意のある訪問買い取りとは無関係だろうが、本件の罰則規定は、最高で三年以下の懲役または三百万円以下の罰金とある。既に施行された同法は現在有効であり、注意が必要である。

Return Top