刀剣界ニュース

公益財団法人日本刀文化振興協会 第五回新作日本刀・研磨・外装 刀職技術展覧会

第五回を迎えた刀職全部門のコンクール「新作日本刀・研磨・外装刀職技術展覧会」が六月二十一日から八月三十日まで、長野県坂城町の「鉄の展示館」にて開かれている。
 
昨年までは東京虎ノ門・大倉集古館で開催されていたが、改修工事のため会場が変更となり、それに伴って公益財団法人日本刀文化振興協会・坂城町鉄の展示館・坂城町三者の共催、経済産業省・文化庁・長野県・坂城町教育委員会ほか地元マスコミ数社の後援により実現の運びとなった。
 
鉄の展示館は、東京から電車で約二時間、坂城駅から徒歩五分、地元機械部品産業展示と人間国宝宮入行平記念室を併設し、十二年前に経産省所管で作られた施設である。七年前からは毎年、全国刀職者の研修もここで実施しており、源清麿生誕の小諸市にも近く、この地は今や信州の日本刀の聖地と称しても過言ではない。日本刀の展示施設は充実していて、鑑賞の環境は非常に良い。
 
ここを会場に五月八日からの三日間、作刀・研磨・外装の順に、二名の文化庁担当官立ち会いの下、厳正な審査が行われた。
 
出品数はやや減少したが、作品は充実していてレベルも高い。作刀部門と研磨部門の上位入賞者の作品は優劣つけ難く、伯仲した審査となった。  研磨部門の入賞者・招待出品・審査員出品には古名刀が多く、特に今年は貴重な在銘品が数口あり、その他清麿展に出品された短刀などが並ぶなど、名刀展さながらで見応えがある。授賞式当日は作刀・研磨の審査員である佐々木卓史氏がテレビの取材を受けていたが、関連の取材で4K映像での撮影に使われた吉原国家刀匠の刀も展示されている。
 
六月二十一日の授賞式は、重要無形文化財総合指定保持者である観世流能楽師の松木千俊氏による奉納能楽「高砂」の舞により、引き締まった厳粛な雰囲気で始まった。本阿彌光洲理事長の開会の挨拶に続き、山村弘坂城町長の歓迎の言葉があり、若林健太参議院議員、初代日本刀文化振興協会会長の徳川康久様(現靖国神社宮司)からはお祝いのご挨拶を頂いた。
 
その後、表彰が行われた。今回は経済産業大臣賞、日本刀文化振興協会会長賞のほか、特別賞として長野県知事賞、信濃毎日新聞社賞、坂城町長賞、坂城町教育長賞が授与された(入賞者別記)。
 
コンクールは厳然たる結果を残すが、好成績にもおごらず、下位
 
最後に、先生から出席者全員に書籍『赤坂鐔』が記念品としてプレゼントされました。本書は、丸に終わっても腐らず、また来年を期してほしいものです。ご来場の皆さまには、必死に挑んだ刀職者それぞれの意欲をぜひ感じ取っていただきたいと思います。コンクールは組織のためではなく個々の刀職者のためにあるのであり、多くの方々が参加されることが刀剣界全体の繁栄にもつながることとなるでしょう。
 
ご支援を賜りました各機関、ご協力を頂きました全日本刀匠会には心より御礼を申し上げます。
 
作刀の部=〈経済産業大臣賞〉明珍裕介、〈日本刀文化振興協会会長賞〉久保善博、〈長野県知事賞〉山上重則、〈金賞〉上山陽三・松葉一路、〈銀賞〉木村光宏・根津啓・森充吾、〈銅賞〉河山栄一さんがご家族・ご親族に贈るために制作した豪華本で、福士先生が監修された赤坂鐔研究の決定版です。限定二百部の稀覯本に、皆さん大喜びでした。
 
福士先生は今年八十九歳になられますが、これからもますますお元気で活躍されることをお祈りし
ます。

(冥賀吉也)内一平・安達茂文・古川信夫
 
研磨の部=〈日本刀文化振興協会会長賞〉小野敬博、〈信濃毎日新聞社賞〉水田吉政、〈金賞〉森井鐵太郎・倉島一・本阿彌毅、〈銀賞〉相良雄一・阿部聡一郎・正海郁雄・玉置城二・渡部恒継、〈銅賞〉藤川二朗・横山智庸・小川和比古・正海裕人・関山和進
 
刀装具の部=〈坂城町長賞〉長内勝義、〈坂城町教育長賞〉フォード・ハラム、〈銀賞〉川島義之・川上登・福與裕毅
 
白鞘の部=〈日本刀文化振興協会会長賞〉森隆浩、〈銀賞〉田澤敦嗣、〈銅賞〉古川和幸・森井敦央
 
柄巻の部=〈銀賞〉笹原喜幸
 
鞘塗りの部=〈銀賞〉小山光秀
 
なお、会期中は展示解説をはじめ居合演武・ナイフ作り・刀剣鑑賞会など、さまざまなイベントが予定されている。中でも八月二十二.二十四日に隣接会場で実施される研修会(公開)では、ほとんどの刀職者の作業風景が見学でき、近くの宮入鍛錬道場で行われる鍛錬実習も一見の価値がある。お問い合わせは、鉄の展示館(.〇二六八-八二-一一二八)まで。
(公益財団法人日本刀文化振興協会幹事・審査員阿部一紀)

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