刀剣界ニュース

報告「黒田官兵衛とその時代の刀工達」展

二〇一四年の「大刀剣市」の特別展示は「黒田官兵衛とその時代の刀工達」と題し、刀八点、脇指一点、短刀二点、槍四点、薙刀二点、拵三点、鐔十五点が出品されました。
 
官兵衛の生きた時代の気風を伝える刀の素晴らしさ、槍・薙刀の凄み、刀装・刀装具の美を堪能し、歴史談義に花を咲かせる方もあり、場内は例年以上に熱気に包まれていました。
 
さて、刀は備前祐定が多く展示されました。「黒田筑前守殿御所持」と金象嵌銘のある與三左衛門尉祐定をはじめ、彦左衛門・新拾郎ら、銘鑑で名前は知られていてもあまり遺作のない祐定の作も出品され、しかもいずれも出色の出来栄えを示していました。「こういうのを見るとわくわくするなあ」との声も上がっていましたが、末備前のお好きな方々にとっては、まさに痺しびれるような展示だったようです。
 
備前以外では、秀吉と官兵衛が攻めた北条氏に仕えた相州住綱広の刀を二振、「鈴木作右衛門打之」との注文した武士の名が刻された武州下原照重の刀、さらに堀川国広と門人正弘の薙刀と短刀、九州肥後同田貫、尾張兼武、そして下坂兼先の大身槍が展示されました。いずれも戦国から江戸初期の時代の気風を伝える名品でした。また黒田家の家紋入りの拵が付された清人の明治年紀の薙刀は、黒田家が終始一貫して武の備えに怠りがなかったことを、あらためて教えてくれる貴重な資料でした。
 
公益財団法人日本美術刀剣保存協会よりお借りした大身槍も展示されました。人間国宝だった隅谷正峯先生が鍛え、苔口仙琇先生が倶利迦羅龍の彫りを施された刀剣博物館竣工記念打ちです。本歌顔負けの迫力ある槍で、こうした槍を自由自在に操った戦国武士の雄姿が目に浮かぶようでした。また黒田家の家紋入りの大小拵と糸巻太刀拵も、筑前福岡五十万石を治めた大大名黒田家の豪華絢爛を偲ばせるには十分でした。
 
圧巻は名鐔十五点でしょう。黒田家伝来の安親作の帰雁苫舟図鐔と李白観瀑図鐔、金家の塔山水図(重美)、そして官兵衛の時代の鐔として、埋忠明寿在銘の九年母図鐔、車透図鐔や波濤図鐔など重厚な鉄の魅力横溢の信家の作品、そして山城国伏見住金家の月見舟図・達磨図・山水図・独釣図・山水樵夫図・野晒図・騎牛帰家図など代表作の数々。「本で見たことのあるあの鐔」の実物がガラスケース内にずらりと並んだ様子は、壮観そのもの。まさに至福の一時となりました。
 
末尾となりましたが、遠路ご来場くださったお客さま、そして展示の趣旨にご賛同いただいてお品をお貸しくださった皆さま、組合員各位に心より感謝申し上げます。

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