刀剣界ニュース

刀剣一族 そして研磨の教え

 富士山が世界遺産に登録されました。日本刀もわが国の文化を代表する一つとして、世界中の人々にその芸術性、素晴らしさを知ってもらいたいものです。
 私の家系は江戸時代後期、柳川藩立花家の抱え工であった信濃守武藤久廣を遠祖とし、孫の小宮四郎國光から小宮の姓を継ぎ、現在では一族五人が作刀を続けています。私は子供のころから刀職に就くものだと思って育ち、刀匠を継いだ兄や一族の助けになれればと研師になることを決め、藤代興里先生の門を叩きました。
 修業に入ってみると、すべに刀の魅力に引き込まれていきました。研師になるための最初の教えは、刀の魅力に気づくことだったのかもしれません。
 今でもいい刀を見せていただくと、感動で鳥肌が立ちます。特に佐野美術館でガラス越しながら生駒光忠を拝見したときの感動と衝撃は、今なお心に深く刻まれています。いつか手に取って拝見してみたいものです。
 刀剣研磨について、師匠より本当に多くのことを教えていただきました。
 一番大事な教えは刀を研ぎ減らさないことで、いくらきれいになるからといって必要以上に減らしてしまっては刀が残っていきませんし、うぶの姿から遠のいていきます。減らすことでいいことはほとんどないのです。また、刀を見やすくするために前の砥石目を必ず取ることも大事なことで、これが残っていると刀の出来以外の余計なもの(砥石目)で出来自体が見にくくなります。それでは刀の魅力がすべて見られないのです。
 今年四月に十年の修業を終えて藤代先生の元から独立し、故郷の福岡県大牟田市に仕事場を構えることになりました。私はこれから、この十年で教わった大切なことを忘れずに、精いっぱい頑張っていきます。そして刀をより良く、魅力的に研ぎ、皆さまに喜んでいただけるよう日々精進し、名刀を前にしたときのあの身の震えるような感動を世界中の一人でも多くの方々に味わっていただければと思っています。
 最後になりましたが、東京にいる十年間でたくさんの方々にお会いし、たくさんの刀を見せていただき、お話しすることができ、大変勉強になりました。ありがとうございました。これからもご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いします。

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