日本刀は武器として発生し、機能面の充実をはかりながら発達してきたことは他の武器・武具と同様です。
しかし、機能面の充足だけとは思えない特異な美意識によって造られてきた一面も窺えます。この美意識は日本人が長い時間をかけて磨き上げた感性の一部だと申し上げてよいと思います。とはいっても日本刀のどこに魅力を感じるかは、個々の方々によって違いはあると思います。
ここでは、日本刀を実際に手にとって鑑賞するために心得ておかなければならない基本的な項目である作法、鑑賞の方法、刀剣の手入れ、鐔の手入れについてお話してみます。
刀剣について特別な知識をもっていなくても、その魅力は充分に感じ取れるものですが、おきてを知り、知識をもつことによってより深い鑑賞度が得られます。
では最初に何をしたら良いのでしょうか。次に申し上げます。
日本刀は一千年以上の歴史を持ち、その作られた場所もさまざまです。そして刀工の数も銘鑑(『日本刀銘鑑』)記載のものだけで○○を数えます。そこでまず、日本刀の通史を覚えることが大切です。日本刀の形状は原則的に時代によって特徴が異なりますので、その特徴をしっかり把握しましょう。一振の刀をみた時、それが作られた時代を見誤らないことがもっとも大切です。
つぎに、国、刀工の系統です。代表的なものに「五カ伝」というものがあります。古刀期(平安慶長以前)の刀剣主要産地は、大和、山城、備前、美濃、相模であり「五カ伝」とはこの五つの国の刀工達の作った刀の特徴を意味します。この五つの国の刀工達には例外を除いて、それぞれ共通した特色があります。またこの中でも同じ刀工集団に属しているものはさらに顕著な特色があります。
また新刀期(慶長文化以前)、新々刀期(文化幕末)、現代刀(明治現代)の刀工達もこれら五カ伝の作風を基本に作刀していますから、この五カ伝の基本を理解して下さい。このページでも刀剣鑑定講座を準備していますので、ご期待下さい。
また、できれば多くの名刀をみることです。名刀の名刀たるゆえんは名刀をみることでしか理解できません。そうした機会は幣店にご来店いただくか、幣店で年二回ほど銀座松坂屋で即売会を開いておりますので、ぜひご覧になってください。常設の博物館・美術館へも足を運んでみて下さい。
僭越ですが、幣店では鑑賞の上達に向けていままでもさまざまな方々のお手伝いをしてまいりました。初心者として始めてご来店いただいた方が、次第に鑑賞力をつけていかれる姿は刀剣に関わる者として誠にうれしい限りです。