現在、日本国内で確認されている刀職者は、五〇〇人前後で、刀を研磨する研師一八〇名、白鞘や拵下地を作る鞘師五〇名、鎺や切羽などを作る白銀師二五名、柄に柄糸を巻く柄巻師が六名、鞘などに漆を塗る塗師七名、刀を作る刀匠が二三〇名と言われています。
この数字を組合員の方々が多いと思うか少ないと思うか、意見が分かれるところだと思いますが、この刀職者の方々のおかげで、日本刀を次の世代に受け継いでいけるのは間違いないことであり、刀職者は刀剣商にとっても、なくてはならない重要なパートナーであります。刀職者の方々を、このコーナーでは全国刀剣商業協同組合に賛助会員として登録していただいている方々を中心に紹介してまいります。
現在の刀剣研磨の技術は、刀匠と並んで重要無形文化財保持者(人間国宝)を何人も送り出すほどの高い技術を持った刀職の一つであり、江戸時代以前と比べても、日本刀を美術品として鑑賞しやすいように、最も技術を進化させた分野であります。それには、人間国宝になられた本阿弥日洲先生・小野光敬先生・藤代松雄先生・永山光幹先生およびその門下の方々などの努力と、研磨技術を高めるために数十年行ってきた日刀保の研磨コンクールなどが寄与するところが大変大きかったと思います。
一部には、研磨コンクールは研ぐ必要のない時代刀をむやみに研磨してしまうのではないかとの批判もありましたが、実際には明治から戦後にかけて手入れもされずに状態の悪かったもの、欧米からの里帰り品などが多かったことは、過去の出品刀からみても理解できるでしょう。そこに研師の刀剣保存に対する高い意識が感じられます。
一時代前までは、流派同士が研磨技術において交わることは少なかったそうですが、各流派のトップの先生方や有識者によって研磨コンクールなどで一定の基準をもって評価するようになり、日本刀を鑑賞する上で、武器としてではなく、あらためて美術品として昇華させ、研磨技術の一つのピークを迎えたことは、刀剣商にとっても大変ありがたいことであります。
鞘師や白銀師、金工、柄巻師の技術の歩みもほぼ同様であり、かつては武家社会の巨大なニーズに応え、封建的で厳しい徒弟制度の中で、それらの技術が何世代にもわたって保持・継承されてきたのでしょう。
現代社会では、後継者や雇用の問題などもあって、コンクールのような評価基準がなければ、これからの刀職者の技術保持は大変難しいことになり、ひいは刀剣商の行く末も暗いものとなってしまいます。
刀職者と刀剣商が、共に良きパートナーとして、これからも日本刀の保存に対する共通の認識を持ち、刀剣界を盛り上げていけるようになることを念じ、次号から刀職者の方々を紹介させていただきます。