刀剣界ニュース

刀の魅力を引き出す 照明の工夫 高岩俊文

 日本刀を間近に鑑賞できる機会の一つに博物館の展覧会があります。博物館のお客さまに刀との接点をお尋ねすると「○○博物館で刀を見た」というお話をよく聞きます。また展示解説をしますと、質問をよく受けます。察するに、刀が好きな方の人口はさほどではなくとも、刀への興味はある、あるいは興味とまではいかないが何となく面白そう、と感じている方は多いようです。
 そんな刀への興味の入り口にいる多くの方々に、もう一歩踏み出していただく。展覧会にはそんな工夫が大切であると痛感してきました。刀には多くの見どころがあります。ここでは展覧会を通して「きれいさ、美しさに触れる」ことを狙いに照明の工夫について考えてみたいと思います。
 刀の魅力を引き出すために重要な要素に、照明があります。蛍光灯で全体を照らし、スポットライトで刀身の元から先まで、目の高さで適度に刃文と地鉄の見どころがわかるように。鑑賞の妨げとならないよう、蛍光灯の刀身への映り込みを加減することも大切です。併せてお好みでお使いいただける懐中電灯も好評です。
 こうした工夫の積み重ねにより「刀は光の照らし具合できらきら光る」という「発見」を生み出せるものと思います。
 刀とは構造が異なる袋槍の展示では、刀架けに架ける通常の方法が取れず悩みました。そこで木工の心得のある愛刀家のご協力を得て、垂直に立てた木製の棒を付けた展示台を製作し、槍を棒に被せて固定し、スポットライトは(上からでなく)横から当てるという方法を取りました。
 また、どなたでも鑑賞できるように、年少者や車椅子の方に合わせて、刀と照明の高さと角度を調整する方法もあります。
 照明は展示ケースなどの設備、照明器具の機能、刀架けの特徴といった諸要素を組み合わせて行うものであり、難しいことも多いですが、そこは知恵を使い手間をかけ、少しずつ経験を積み、展示の質を向上させています。そして刀を初めて見る方にも「刀はきれいで美しい」と感じていただく機会となるように心がけています。
 今後もたたらと刀の博物館として、刀の魅力を引き出す展覧会を催し、刀剣界の向上に資するよう一層努めてまいります。(筆者は和鋼博物館学芸員)

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