九年前、静岡県三島市の佐野美術館で「宮入一門展」が開催されており、そこで師匠(宮入小左衛門行平)の刀を見たことが入門のきっかけとなりました。翌年、勤めていた会社を辞め、その春に師匠の門を叩きました。
初めはアポなしの訪問であったためか断られましたが、後日手紙を書いて出直し、運良く入門することができました。今そのときのことを思い返すと、何だか恥ずかしくなりますが、当時は真剣だったのだと思います。
修業中は炭切りばかりではなく、早い段階からいろんな仕事をさせていただきましたので、一通り刀が作れるようになるのに、それほど時間はかかりませんでした。しかし、そうは言っても、作品になるようにするには、それから長い年月が必要でした。
最近、ようやく作品が作れるようにはなりましたが、まだまだ課題は山積です。まずは、それらを一つずつ着実に克服していきたいと思っております。
私が作品を作る上で大切にしていることは、小さな欠点にはこだわらずに、大きな魅力のある作品にすることです。相州伝の場合は特に、小さな欠点を気にしすぎると、全体として魅力に欠ける作品になりやすいので、失敗を恐れずに覇気のある作品となるように心がけております。
とはいえ、まだまだ駆け出しですからわからないことが多く、他の職方さんのご協力を得ながら、何とか作品にしているのが現状です。
現在も住み込みで師匠の仕事場をお借りしており、大変ありがたく思っています。いつの日にか、見てくださる方の琴線に触れるような作品を作ることを目標に、日々黙々と作刀しています。