刀装具

鐔 信家 古河家伝来

鑑定書内容:財)日本美術刀剣保存協会 特別保存刀装具
[N.B.T.H.K] Tokubetsu Hozon Tosogu

鐔 信家 古河家伝来
  • NO.B132
  • 作者:信家(銘 離れ銘)
  • Maker:Nobuie(Hanare Mei)
  • 伝来 : 古河家伝来 平成24年尚友会展示作品
  • 時代:桃山時代ー尾張国(愛知県)

桃山時代の鐔工、信家は鉄鐔の最高峰として数多の大大名を魅了してきた。その魅力は厚手で量感があり、鉄の鍛えが無類によく、打刀拵によくうつる鐔という点にあり、その題目に剣の極意や時代の思想を表したものを毛彫にした物もみられることから当時の侍より死生観に基づいた入念な注文を受けていたことが伺える。
本作は同作を製作した後、円形に整え、桃山時代以降に全国で流行した透かし鐔に作り変えた物と見られる大変貴重な作品である。過去に極僅かであるが、信家鐔の耳の形を変更したり、小透かし程度を加えた同作鐔を経眼したことはあるが、これほど大胆に意匠を変更した作品は他に例を見ない。信家に見られる重厚な板鐔が隆盛後、日本全国で地板のほとんどを透かす、「陽の透かし」といわれる作品が大流行した。尾張国でも同手の作品が流行し、お国柄で鉄の鍛えよく、肉厚な透かし鐔が多く作られている。本作は当時の所有者が、新作ではなく、自らの所有する信家鐔を用いて最先端の透かし鐔を製作せよと命じて作られた作品と思われ、現在のサイズから察するに、元はかなり大型でまた鉄味のよい第一級品の信家鐔を用いたことがわかる。全国で隆盛した透かし鐔もその鍛え、重厚感からやはり同国の尾張透かしや金山透かしが愛好されているが、どれも名工信家の鍛えの出来には及ばない。本作は良質な素材と鍛えの良さが伺える鉄色、隆々と浮き上がる鉄骨など流石に見事であり、まさに史上最高峰の透かし鐔ともいえるのではないだろうか。また本作は明治8年に創業し、日本屈指の大財閥に上り詰めた古河財閥、古河家の旧蔵品でもあり、これほどの名鐔を用いて透かし鐔を製作させるという誰にも真似のできない注文を出した注文主も第一級であるならば、それを射止めて所有した後の所有者もまた日本を代表する第一級の愛好家であったという素晴らしい名鐔である。



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