刀剣界ニュース

心を一瞬で魅了できる 刀を目指す

三年半余りの施工期間を経て、東京スカイツリーがいよいよ完成しました。六百三十四メートル。赤城山から上京した際、「よし!」と思い、少し遠回りして間近で見ました。天を射抜くようなその姿に、思わず圧倒されました。さまざまなことがあったこの国にとって今、この塔が建つこと、二十一世紀のシンボルとして、支柱の一つに加わることは、大変頼もしく感じます。
 さて、同時期、私は十二年の修業を重ねた後、刀匠銘「 恒つねよ し厳」として、故郷・群馬県前橋の地に鍛刀場を構え、独立の一歩を踏み出しました。
 この道に入るきっかけは、学生時分に古書店で手に取った冊子『麗』「現存の優品」でした。それに載っていた宮入昭平師の記事を読み、この時代に日本刀を作る人がいることに驚き、また戦後の苦難を乗り越え、美術刀剣復興を支えた生き方に深く感銘を受けました。
 山形での修業時代は、ただただ這いつくばって、しがみついて、ひたすらに心と身体をタフにすることで、やっと親方の元に置いてもらった月日。不器用なこと、アタマがないことを教えられて、それでも刀が好きで作りたいと思い、頭の中に刀の格好があるなら何とか形になるんだと、そう習ってきた気がします。「鍛冶屋には鍛冶屋のアタマってのがあるんだ……」。よく言われました。
 今目指す刀は「鎌倉」、ではなく、「心を一瞬で魅了できる刀」と答えます。史上の名刀をただ真似たとしても、世の中すべての人に「美しい」と感じさせることができるか疑問だからです。
 関東では川﨑晶平刀匠が、純粋な目で刀が見られるよう、志を持って若手を牽引してくださっています。この国の歴史の象徴である日本刀が、家々の未来
を紡ぐシンボルとして共感される日が来ますよう、われわれの道を救ってくださる方々がいれば幸いです。
 日本刀が永遠に輝きを放ちますように。

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