刀剣界ニュース

新撰組の故郷で 研ぐ

私の家は、祖父の代から東京・立川で日本刀の研磨を仕事としていました。小さいときから仕事をしている姿を見ていたので、次第に日本刀へ興味を持っていったのを覚えています。
 
高校を卒業して藤代興里先生のところへ入門し、十年間という長いようで短い期間、研磨の教えを請い、平成二十四年四月に独立させていただき、立川市に仕事場を構えることになりました。
 
修業中一番の思い出になったのは、大太刀の研磨です。錆を取りすぎて刀を減らさないように、錆を残しすぎて美観を損なわないようにと、この錆を残すか、取り除くのかを何度も先生に質問しました。その度に真剣に答えていただきました。刀を美しく残す―そのため刀を研ぎ減らさないことが一番大事だと教わりました。
 
立川がある三多摩は新撰組の故郷であり、近藤勇の大和守秀国、土方歳三の十一代会津兼定が大事に受け継がれています。また、三多摩では下原鍛冶が室町時代末から小田原北条家の元で作刀しています。日刀保多摩支部では研究も盛んで、下原刀の愛刀家もたくさんおられます。地元の刀を大事にすることは素晴らしいことだと思います。
 
ここ立川で日本刀の研磨をさせていただくに当たり、少しでも多くの方に、少しでも長く、次の世代にこの美しい日本刀という文化をつなげるお手伝いをさせていただけたらいいなと考えています。
 
今までお世話になった藤代先生をはじめ、いろいろなアドバイスをくださった諸先輩、本当にありがとうございました。これからもご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

Return Top