刀剣界ニュース

「國家」 襲名三十周年を記念して

 吉原國家刀匠の個展が、日本橋島屋六階美術画廊において三月二十八日から四月三日まで開催されました。
 三代目「國家」襲名三十周年を記念して、初の個展となった今回、得意とする備前伝一文字の重花丁子を彷彿させる作品のほか、直刀や、相州伝の寸延び短刀など、意欲作が十八点、小刀・火箸・文鎮など小物類も多数出品され、来場者の目を楽しませました。
 中でも毛抜形太刀は、平安中期ごろに出現した湾刀の原型と言われるもので、刀身と柄が共造りになる特殊な形状を見事に再現しております。さらに、柄の装飾と鎺を含めた銀総金具、鞘に緋色の錦地で飾られ、その上品かつ精悍な美に心惹かれました。
 初日の開場と同時に大勢のファンやお客さまがお越しになり、國家刀匠の人気の高さを伺わせます。夕刻には同会場でレセプションが催され、諸先生からのご祝辞と乾杯により、和やかで温かな祝賀会が始まりました。皆さんがワインを片手に、心から楽しんでおられるのを見て、國家刀匠のご人徳をしみじみと感じました。
 また、土曜日にはギャラリートークがあり、自ら作品の解説や作刀の思いを丁寧に話されました。会場を埋めたたくさんの来場者からは質問も多く、関心の高さを感じます。
 最終日までに実に多くお客さまが来場され、一振一振お手入れさせていただきながらお手伝いした撤収は、皆さまの反応を想像する楽しい時間でした。
 良い作品を作ればお客さまは評価してくださるのだな、と現代刀の未来に大きな希望を見いだせる個展でした。「次はぜひ自分も」と、決意した若手刀工は多いのではないでしょうか。もちろん私もその一人です。(川晶平)

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