六月の初め、大刀剣市出店の申込案内が届いたので、早速申し込んだ。初めての参加である。
数日後の組合交換会の折、嶋田理事から「ブースの場所はどこがいいですか」と聞かれ、図面を見せられた。気に入ったところがあったので、お願いした。
七月十七日に撮影のため商品を持参した。清水専務理事と嶋田理事が立ち会い、一振一振丁寧に確認してくださった。八月一日には撮影が終わって、引き取らせていただいた。
十月一日夕方、所用を済ませて帰宅すると、図録が届いていた。その日から連日、問い合わせの電話が相次いだ。数十件にも上る多さに驚き、それだけですっかり売れたような気持ちになり、数字だけがどんどん膨れ上がってしまうのだった。「捕らぬ狸の皮算用」とは本当にこのことだ。売上予想は大刀剣市初日に泡と消え、現実はそんなに甘くないことを思い知らされた。
しかし、来客数は多く、初日、店前だけでも十人ほどいることが多くあった。二日目の土曜日は前日よりもお客さまが多く、一番多いときは二十一名の方が私のブース内にいた。
お客さまから「これを見せて」と声が掛かると、ケースから品物を取り出すが、見ていただいている途中に別の方から声が掛かっても、前の方が見終わるまで待っていただかなくてはならないほど混んでいた。
三日目も日曜日とあってお客さまが多かった。刀剣の好きな方とお話しする機会も多く、一日が短く感じられた。トントンと続けて売れることもあり、何とか売上もできた。
閉店の時間となり片付け始めたが、ハッと気がつくと、周りには誰もおらず、荷を車に積み込んだのは既に八時だった。
今回、十数年ぶりにお会いできた方、三十年来お付き合いのある方、現在お世話になっている方などたくさんの方とお話しできたし、東京美術倶楽部の美しい会場で楽しく仕事をできたことに感謝している。組合員の皆さまともご一緒の機会が得られ、刀剣業界が良くなるために今後も何かしたい思いも強くなった。
初出店を心配して何度も当店のブースを見に来てくださった深海理事長をはじめ、大刀剣市の成功のためにご尽力くださった役員の皆さま、お手伝いくださった多くの方々に御礼申し上げます。(秀美堂・小畠昇)