昨年十一月に亡くなった俳優高倉健さん(本名・小田剛一)の遺愛の刀剣類八振と日本刀専門書籍五十点などが長野県・坂城町鉄の展示館に寄贈されることになり、七月二十四日、当町在住の刀匠宮入小左衛門行平氏の自宅で、高倉さんの養女小田貴氏(東京都)より山村弘坂城町長に手渡された。
生前高倉さんと親交の深かった宮入氏を小田氏が本年六月に訪問し、遺品である刀剣について宮入氏に託したいと申し出たところ、自分が所有するよりは多くの人に見ていただき、永遠に高倉さんを偲ぶことができるようにしたらと、鉄の展示館への寄贈を勧めた。
寄贈された刀剣には、堀川国広の脇指(重要刀剣)をはじめ豊後などの九州物が含まれており、故郷に寄せる思慕の念がコレクションの傾向にも表れ、また高倉さんの人柄の一面も示している。
宮入氏は、「高倉さんは生前、たとえば仕事の選択や人との関わりなど縁.ということをとても大切にしていたように見受けられました。毎年欠かしたことのない善光寺参りの道中でもあり、幾度となく足を運んでいただいた鍛刀道場など、多少なりとも縁のあるこの地で、遺愛の品の公開を喜んでくださっていると思う」と語る。
報道陣を前に小田氏は、「映画俳優として芝居に込める気や人間としての規範までも日本刀から頂いていたのでは」と、かたわらでお手入れを見ていた印象を語り、また、宮入氏との関わりを問われると「仲の良い兄弟のよう。長野へ来ることや電話での会話が嬉しくて仕方がない様子だった」と偲んだ。今回の寄贈についても、「(高倉さんが)ちゃんとしてくれたな、恵ちゃんに任せれば大丈夫と言ってくれると思う」と話した。
当館においては九月一日..二十七日.、緊急特別展示「高倉健さんからの贈りもの」を開催している。今回寄贈されたものに併せて、生前宮入氏が託され、現在は公益財団法人日本刀文化振興協会の所有する則重(特別重要刀剣)、拵の製作途上にあり高倉さんに手渡せなかった宮入氏の刀、書簡、遺品などで宮入氏との交友、高倉さんの日本刀に寄せる思いが伝わる展示とした。
山村町長は「いずれは恒久的に高倉さんを偲べるように施設を整えたい」と「高倉文庫(仮称)」として遺品を公開する意向を示している。(坂城町鉄の展示館学芸員・宮下修)