鑑定書内容:鑑定書 :(財)日本美術刀剣保存協会 重要刀装具
Certificate:NBTHK Juyo Tosogu No.63
- No.:B087
- 龍獅堂 光村利藻氏旧蔵品
大黒毘沙門二天之意大小縁頭 銘 吟松亭東明(花押) - Pair of Fuchigashira Tomei
- 江戸時代 19th Century
- 価格:御売約 Sold Out
幕末に一世を風靡した荒木東明の大小縁頭の作品。
荒木東明は文化十四年に生まれ、後藤東乗、後藤一乗に学び、それぞれから「東」「一斎」の工名を許されて一斎東明と銘している。彼は京都の画家林蘭雅について下絵を学び、代名詞とも言える粟穂の彫刻は蘭雅との研究により考案された物と言われている。本作は「大黒毘沙門二天之意」と題されて制作された作品である。毘沙門天は仏教における天部の仏神であり、持国天、増長天、広目天と共に四天王の一尊に数えられる武神、大黒天は同じく天部の守護神達の一人で、軍神・戦闘神、富貴爵禄の神または厨房・食堂の神ともされている。本作は二神のトレードマークとも言える宝塔、三叉戟、兜と大袋、小槌、宝珠が描かれ二神の姿は見られない、いわゆる「留守模様」といわれる、意図した図柄を連想される付属物のみを用いることで、鑑賞するものに想像して楽しんでもらうことを意図して制作された手法である。当時、鑑賞する方にもある程度の鑑識が求められる上流階級に好まれた風向雅な手法であり、二神の対比、図柄の描写等実に見事である。本作は明治の大収集家、光村利藻の旧蔵品であったことを示す、龍獅堂の箱に納められ、明治丙年、池田隆雄の箱書きを添えた二重箱となっており、如何に本作が重宝として珍重されてきたのかを表す好資料である。