新刀

(九曜紋)山城大掾藤原国包
Yamasiro daijyo Kunikane Kuyoumon

鑑定書内容:財)日本美術刀剣保存協会 特別保存刀剣
[N.B.T.H.K] Tokubetsu Hozon Token

(九曜紋)山城大掾藤原国包Yamasiro daijyo Kunikane Kuyoumon
  • No.754
  • 銘文:(九曜紋)山城大掾藤原国包
  • Sign:(Kuyoumon)Yamasiro daijyo Kunikane 
  • 種別:拵付脇指 Wakizashi and Mounting
  • 寸法:1尺6寸9分(51.2 cm)反り 0.9 cm 元幅 2.9cm 元重 0.6cm
  • 時代:江戸時代前期ー陸奥国(宮城県)
  • 価格:御売約 Sold Out
  • 鞘書:葆光(神津伯)
  • 「仙台の名工 国包」展 出品作 「神津伯押形」所載

江戸時代初期の伊達家抱え工、初代仙台国包の特別保存刀剣指定作品。初代国包は文禄元年に生まれ伊達政宗の抱え鍛冶となり、その命により京の越中守正俊の門に学んだとされている。国包は相州伝の盛行した新刀初期に於いて、大和保昌伝の作域を目指し、その技量は、ほぼ古保昌の域に迫っている。伝説に彼は大和保昌五郎の末流と云われており、当時他に類をみないこの古典的作風が政宗に好まれたのであろうか。その一門は以降明治に至るまで十四代に渡り伊達家の抱え工として活躍した名門である。
本作は鎬が高く、鎬幅の広い体配に、地鉄、純然たる柾目肌に地沸が細かに厚くつき、地景がよく入った鍛えに、刃文、直刃調にのたれ、金筋・砂流しを交え、刃縁が細かにほつれ、帽子、焼きつめるなど彼が理想とした大和保昌伝の作域をよく示している。
神津伯氏による鞘書に「山城大掾藤原国包 銘ノ上に九曜ノ紋あり 刃長一尺六寸九分半 昭和丗三年初秋誌之」とある通り、本作は茎に九曜紋が刻まれている。江戸時代の刀剣書「新刀辨疑」に「太守ヨリ九曜の紋を給ひ」とあるのを始め、古来多くの刀剣書に初代国包には仙台伊達家で用いられていた家紋の一つである九曜紋を茎に切り添えた作品があるとの記載が見られるが、本作がまさにその実例である。実際に九曜紋を拝領したかについては公式な資料が残されておらず、寛政六年に仙台藩の研師らによって編まれたとされる「封内新刀銘鑑」では拝領したことを否定する記載が見られること、紋を刻んだ作品がごく僅かにしか存在しないことからも、徳川家から葵紋を許された越前康継などの刀工達の様な正式な拝領があったと確定するには早計だろう。しかし同手の作品は本作で経眼僅か二例目であり非常に希少な作品であることは論を待たない。何故に刻まれた物であるのか、今後の研究を待ちたい。
拵は遊楽斎赤文の在銘で龍虎図を描いた一作拵であり非常に良くできている。本作は在銘作の刀は世にただ一振りと云われる長曽祢興直の刀の指し添えで、「永世秘蔵スベキ家宝」との書付が添えられている。考えるに刀、脇差共に世に類例のない一点物の大小として自慢の品であったのではないだろうか。旧所有者の依頼により近年まで上野国立博物館の収蔵庫にて保管されていた為、刀身、拵から鞘書までの全てが非常に健全な状態で伝世した優品であり、先に宮城県の鹽竈神社で開催された「仙台の名工 国包展」にて剣界に久し振りにお披露目される事となった。

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