新刀

南紀重国
Nanki Shigekuni

鑑定書内容:財)日本美術刀剣保存協会 特別保存刀剣
[N.B.T.H.K] Tokubetsui Hozon Token

南紀重国Nanki Shigekuni
  • No.A761
  • 銘文:於南紀重国造之
  • Sign:Shigekuni Nankinioite korewo tsukuru 
  • 種別:拵付脇差 Wakizashi and Mounting
  • 寸法:1尺2寸8分(38.9cm)反り0.9cm 元幅3.4cm  元重0.7cm
  • 時代:江戸時代前期ー紀伊国(和歌山県)
  • 価格:御売約 Sold Out

徳川家康の抱え工、南紀重国の特別保存刀剣指定作品。
南紀重国は本国は大和で手掻派の末葉といわれ、江戸時代初期に徳川家康に仕えて駿府にて作刀し元和5年(1619年)に徳川頼宣が紀州和歌山へ移封の際に従って同行した。彼の作風は大きく分けて二様があり、直刃調の大和伝のものと、乱れ刃の相州伝のものが残されている。
本作は身幅特に広く重ねの厚い豪壮な体配に、その全面に渡る濃厚な倶利伽羅彫りを加えた堂々たる逸品である。重国には同手の体配に素剣、梵字、倶利伽羅、棒樋、二筋樋など様々な彫物が添えられた作品が残されているが、彫身の代表作品としては彫り師、池田権助義照の添え銘が入った津島惣平氏旧蔵の日本刀大鑑所載品であることは論を俟たないであろう。同作は樋中に余白なく大仰な彫が施された優品であるが、加えて注目するべきが長文の銘文で、明光山に於いて製作された注文作で「羽掃」の号と、棟には彫師の銘の上に「彫物天下一」とまで添えられていることから、いかに重国が思い入れを持って制作した入念作であるかが伺える。重国の作品に添えられた彫物が全て義照の手に寄る物かは未だ定説がないが、同作が彫物を重視していた事は確かである。本作は一見すると同手の作品と見紛う出来を示しているが、両者の彫を比較すると鏨使いに相違があり、また義照彫が元和八年、同作の初期作なのに対し、銘字を見るに本作は晩年作である。上記を捉えてか、鑑定書にも(彫物後刻)とあり、日本美術保存協会に筆者が確認するに、「古い彫であるが、池田権助義照の手に寄る物ではなく、混同を避けるためにあえて追記した」とのことである。常の作に比して身幅広く、焼きを極端に低く焼いている事から大仰な彫を添えることを主に制作した作であることは明らかであるが、かつ鍛えは細かくつみ、地沸微塵に厚くついた潤いのある優れた地鉄を用いており、同作の技量の高さを伺える優品である。いかなる彫師の手による作なのか、今後の研究が待たれる。

参考資料 彫の比較 左 池田義照 右 本作

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