山梨県の都留市博物館「ミュージアム都留」に於いて特別展、「崇高なる造形 日本刀 名刀と名作から識る武士の美学」が開催されている。同館では平成30年より刀剣、刀装具を展示する特別展を開催し始めており、前回高評価を得た「魂の造形 日本刀 名刀と名作から学ぶ日本の心」に引き続き刀剣、刀装具の名品、優品が集められた。刀剣は平安時代から幕末までの代表刀工、刀装具も優品の数々、特に後藤祐乗、金家、信家の各作品を12点(詳細は後述のリスト参照)ずつと非常に充実した展示内容が叶った事は、出品作を全て所蔵品ではなく貸出品で集めた事を勘案すると驚愕であり、収集に務めた担当学芸員の努力、見識には敬意を評したい。会場を俯瞰してみると展示品が非常に見やすく、また各作品がとても格調高く感じた。これは展示品の質の高さもさることながら、展示に使われている刀掛けが全て時代物の上級品である事に由来すると思われた。通常日本刀の展示では鉄器である刀剣と漆芸品である刀掛けを時代物で揃える事は作品管理の観点から困難であるが、同館の展示ケースは温度湿度調整を完備しているとの事で実現した展示であるという。通常名品の刀掛けは名刀にも増して御目に掛かる機会が稀であり非常に眼福であった。日本美術刀剣保存協会山梨県支部の協力のもと、同支部長、伊藤満氏並びに全支部長、萩原守氏の講演、スライドレクチャーや日本刀文化啓蒙団体「鉄芸」による現代刀職の実演や同館学芸員服部浩平氏による日本刀取扱レクチャーなど啓蒙イベントも多数行われる予定であり、非常に意義深い展覧会である。今後も同館の活躍に期待したい。
刀剣 | 古備前正恒(重美)、長船兼光(重美)、来国俊、五郎入道正宗(重美/武蔵正宗)、相州秋廣(重美)、志津三郎兼氏、長谷部国重、千子村正(有栖川熾仁親王所用)、孫六兼元、堀川国広(重美)、南紀重国(重美)、肥前忠吉、長曽祢虎徹(重美)、源清麿、一徳斉助則、行光・大進房(上杉家伝来) |
刀装具 | 金家・信家24点(重美4点)/後藤祐乗12点/林又七(重要文化財1点)/横谷宗みん/土屋安親/岩本昆寛/石黒政美/一宮長常/大月光興/荒木東明/松尾月山/海野勝みん ほか(注釈)機種依存文字不可のため「みん」としています) |
会場:都留市博物館「ミュージアム都留」
住所:山梨県都留市上谷1丁目5番1号
会期:令和2年11月7日から令和3年1月24日
企画:日本美術刀剣保存協会山梨県支部
関連イベント
申込先:電話番号 0554-45-8008/E-mail tsuhaku@city.tsuru.lg.jp
・スライドレクチャー「日本刀の魅力に迫る」
専門家による日本刀についての講演と列品解説。
講師:伊藤満氏(日本美術刀剣保存協会山梨県支部支部長)
日時:令和2年11月15日(日曜日) 13時から14時30分まで
定員:30名(事前申込)
・講演「刀装具とは」
刀剣趣味の究極とされる刀装具の世界をご紹介します。
講師:萩原守氏(日本美術刀剣保存協会山梨県支部前支部長)
日時:令和2年12月6日(日曜日) 13時から14時まで
定員:30名(事前申込)
・現代刀匠による「銘切り実演」
小さな金属板に指定の文字を切ります。
講師:山本清二刀匠(中央市在住)、吉田康隆刀匠(身延町在住)
日時:令和2年11月28日(土曜日)/令和2年12月20日(日曜日)14時30分から16時30分まで
定員:材料がなくなり次第終了(申込不要、見学可)
料金:2,000円(材料費)
・刀剣・刀装具相談会
専門家による刀剣相談会。
講師:伊藤満氏(日本美術刀剣保存協会山梨県支部支部長)
中川博氏(日本美術刀剣保存協会山梨県支部役員)
日時:令和2年11月22日(日曜日) 13時~14時30分
定員:15名(事前申込)
(注意)刀剣類は必ず「銃砲刀剣類登録証」と一緒にご持参ください。
・「鉄芸」による現代刀職実演 (参加申し込み不要)
日本刀文化啓蒙団体「鉄芸」による、現代刀職による実演です。
講師:石田國壽氏(刀鍛冶)、小川和比古氏(研師)、藤代龍哉氏(研師)、松村壮太郎氏(研師)、水田吉政氏(研師)、森井敦央氏(鞘師)、飯田慶雄氏(飯田高遠堂)
日時:令和3年1月9日(土曜日) 10時から12時まで、13時30分から17時まで
・初心者講座「日本刀に触れてみませんか」
(注意)新型コロナウイルスの感染拡大状況をみながらの不定期開催。
開催の際は当HP、ツイッター上で告知。
初心者向けの日本刀の取り扱いについてのレクチャー。
講師:服部浩平(ミュージアム都留学芸員)
日時及び定員:窓口、ミュージアム都留HP、Twitter上でご案内します。
(要事前申込、高校生未満の方は要保護者同伴)