刀装具

流水時鳥図小柄 銘 政随 行年七三才
Kozuka design of River and Cuckoo Signed by Shozui are of 73

鑑定書内容:財)日本美術刀剣保存協会 重要刀装具[N.B.T.H.K]Juyo Tosougu No.58

流水時鳥図小柄 銘 政随 行年七三才 Kozuka design of River and Cuckoo Signed by Shozui are of 73
  • NO.B159
  • 作者:浜野政随
  • Maker:Hamano Shozui
  • 時代:江戸時代 (1696-1769)
  • 価格:御売約 Sold Out
  • 刀装具の鑑賞Ⅱ 所載品

政随作小柄の重要刀装具指定作品。
浜野政随は奈良利寿一門の逸材として知られ、多くの門弟を育成、浜野派という町彫における主要門流を形成した名人である。稀に見る漢学者であったと云われ、乙柳軒・味墨・閉径・遊壺亭等々、多くの号を用いて名作を制作し、「江戸金工銘譜」に「世に雷鳴す」と称されるほどの高名を馳せた。師である利寿の作風を継承しつつ、乗意、安親の作風を取り入れ、特に後年の物は豪快な高彫りを駆使した雄渾な作品を多く残している。明和六年七十四歳没。
本作の画題は古代中国、蜀の望帝杜宇(とう)である。ホトトギスは、杜鵑、杜宇、蜀魂、不如帰、時鳥、子規、など異名表記の多い鳥であるが、その語源となったのが望帝の故事であるという。『蜀王本紀』に曰く長江流域に蜀という国あり、そこに杜宇(とう)という男が現れ、農耕を指導して蜀を再興し帝王となる。その後、長江の氾濫を治める男に帝位を譲り、山中に隠棲した。この山には鵑(けん)が鳴く。そこで国人が『あれは杜宇さまの生まれかわりだ』と、杜鵑と呼ぶようになったという。杜宇は死ぬとホトトギスに化身し、農耕を始める季節が来るとそれを民に告げるため鋭く鳴くようになったといい、またその声が不如帰去(帰るにしかず)と鳴いているように聞こえ、故郷を離れた旅人に帰心を抱かせるので『思帰』とも呼び、それがいつしかなまって『子規』とも書くようになったいうのである。
掲出の小柄は大河(長江)の脇に治水の為纏められた枯れ木が並んだ蜀の地に、望帝杜宇の化身である杜鵑が今まさに春の始まりを伝えるべく声高く鳴いている情景を捉えた物であろう。寒々とした景色に賢君を慕う民と、民を思う帝の暖かな繋がりを暗示した奥ゆかしい情景を描き出している。政随73歳、晩年に至り、技量、知識共に最高潮に達した同作の静観な作域を示した逸品である。



 


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